脇本雄太(33=福井)が20年前橋・寛仁親王牌以来、通算6冠目となるG1制覇を果たし、暮れのKEIRINグランプリ(GP、12月30日・平塚)切符を手にした。

日本選手権(ダービー)制覇は、完全Vした19年松戸に続き2度目。2着に地元の佐藤慎太郎、3着に守沢太志が入り、絶好の展開だった平原康多は4着に終わった。


ダービー2度目の制覇を果たし、賞金ボードを掲げる脇本雄太
ダービー2度目の制覇を果たし、賞金ボードを掲げる脇本雄太

脇本雄太が、SSの座を力ずくで奪還した。「先行日本一」の看板奪取に挑む真杉匠に“王者の前受け”で受けて立った。今年、不発にさせられ、何度も辛酸をなめたリスクある戦法。いや、むしろ、その戦い方にこだわっていた。


逃げた真杉に対し、後方7番手から襲いかかった。「記憶がない」というほど、死力を尽くしたこん身のまくりは、他の6人が身動きできないスピード。「やっぱり、力ずくで勝負しないとね。それが実現して、良かった」と、本心からの笑顔を見せた。これが自分の、脇本の走りだ。


「今年は出られるG1が少ない中、どうしても優勝が欲しかった」。


昨年、東京五輪でのメダルを目指し、極限まで仕上げてきた体が悲鳴を上げた。腸骨の疲労骨折による長期の戦線離脱は、今もなお影響している。2月の全日本選抜は欠場回数が響き、地元近畿のG1である6月の高松宮記念杯は出走本数が足りず、出場権がなかった。


「今年はG1を取ってGPに出るのが第一目標だった」。ダービーは、SS復帰の限られたチャンスだった。


決勝・最後の直線でゴールを目指す脇本雄太(中央=1着)、佐藤慎太郎(左から3人目=2着)
決勝・最後の直線でゴールを目指す脇本雄太(中央=1着)、佐藤慎太郎(左から3人目=2着)

今年4月、正式にナショナルチームを離れた。今月末にも練習拠点を置いた伊豆から福井へ戻る。この5年間、日本自転車界では最先端のトレーニング器具で鍛え上げてきた。「福井にも同じ環境をつくりたい」。約900万円増額された優勝賞金は“脇本道場”に充てるつもりだ。


これで、古性優作とともにGP出場が決定。「より多くの近畿勢をGPに連れていく」。暮れの平塚を、近畿の祭典にしてみせる。【山本幸史】


◆脇本雄太(わきもと・ゆうた)1989年(平元)3月21日、福井市生まれ。科学技術高卒。競輪学校(現養成所)94期生として08年7月に福井でデビュー(予選1着、準決1着、決勝2着)。18年いわき平オールスターでG1初制覇。20年・寛仁親王牌などG1は今回で6冠目。自転車トラック短距離でリオ五輪、東京五輪に出場。通算800戦307勝。通算獲得賞金は8億3388万9400円。180センチ、72キロ。血液型A。