辛うじて先頭でゴールにたどり着いた。近江翔吾はスタートまで完璧だったが、周回を重ねるごとに末永和也の猛追を受けた。「ターンはゼロ点。大事に回らないと、と思い、ちゃんと回れなかった。最後まで気が抜けなかった。ホッとしました」。ゴールでアクションを起こす余裕はなく、胸をなで下ろした。

エース22号機のパワーを存分に引き出し、G1優出3度目、デビュー11年10カ月で待望のG1初優勝を飾った。2走目に6着を取ったが、すぐに気持ちを切り替えた。その後は怒濤(どとう)の6連勝。ヤングダービーの卒業を最高の結果で締めくくった。「運とエンジンのおかげです。行き足から出足がすごく良かった。エース機だと思う。G1タイトルが欲しかったので良かった」と喜んだ。

周囲の刺激、支えも大きかった。8月のメモリアルでは支部先輩の片岡雅裕がSG初優勝。「すごくうれしかった。続きたい気持ちはあった」。優勝報告は? の問いに、師匠の河上哲也と母親を挙げた。「師匠には17歳でデビューしてからすごくお世話になってきた。母、家族にも連絡したい」と深く感謝した。

この優勝で来年3月のSG権利を獲得し、賞金ランクも44位へ浮上。年末の大村グランプリシリーズ出場も視野に入った。「圏内にいるのであれば賞金を積み上げたい。でも11月に地元(丸亀)周年があるし、そこまでにもいいレースができるようにしたい。まだ全部が足りてないので」。着実な地力アップを最優先に、さらなる成長の階段を駆け上がる。【窪寺伸行】

◆優勝戦VTR コンマ05のトップスタートを決めた近江翔吾が先マイ。出口で舟が浮いたが、中村日向の差しを許さず先頭に立った。2番差しの末永和也が2着を走るも、3周2Mで振り込み、3着を走っていた羽野直也とともに後退。アクシデントをくぐり抜けた上條暢嵩が2着に入った。

○…まさかの展開だった。末永和也が道中で2着を走っていると、先頭の近江翔吾との距離が徐々につまった。勝負をかけた3周2Mだったが、振り込んで6着に後退。レース後は涙を流した。「買ってくれたお客さんに申し訳ないことをしました。これからは安心して見てもらえる選手になりたい」。この悔し涙が、彼をさらに成長させる。