29日の午後に駆け巡った村上義弘引退のニュースは、1つの時代の終えんを告げると同時に、選手たちの心を大きく揺さぶった。

一報を受け、村上と同期の渡辺晴智(49=静岡)に真っ先に連絡したが、あまりにも落胆の色が濃かった。コメントをお願いしても、「少し時間を下さい」と丁重に断られてしまった。

しかし、一夜明けて気持ちの整理をつけて連絡をくれた。「今日はやる気が出なくて休んでいます。でも、成清(貴之)のコメントとかを読んで、やっぱり同期で僕が出ないと始まらないでしょうと思いました(笑い)」。そう前置きしてから村上への熱い思いを語り始めた。

「村上から引退の連絡をもらった時は、ショックが大きすぎて受け入れられませんでした。お互い灰になるまでやろうな!と言っていたんです。話をしていて涙が止まらなくなりました。競輪学校時代から苦しい時、うれしいときには、必ず村上が横にいて、いつも『お互い頑張りましょう』と励ましてくれました。村上は自分より年下ですが、すごく気を使ってくれる人間ですし、尊敬できる偉大な男です。一瞬でも先行日本一は村上、追い込み日本一は晴智という時期があったのが、自分にとって誇りなんです。そんな村上から『晴智さんと同期で幸せでした』と言ってもらい、少し救われた気がします。村上らしい引退の仕方だなと思いますが、やっぱりさみしい気持ちでいっぱいです。本当にありがとう」。

今期は25年ぶりにA級陥落。試練のまっただ中にいるが、自分を奮い立たせてS級への復帰をつかみ取ろうとしている。闘志あふれる走りの裏には、盟友と共有してきた“魂”があるからだ。