桐生が完全にレースを支配した。スリットは唯一のゼロ台となるコンマ06。「誰も来なかったので、どうしようかと」。そう苦笑いで振り返ったが、その走りに迷いはない。外を握った西山を受け止め、内を狙った関にも何もさせない、天下無敵の絶品ターンで1M先制を果たした。

「長かったっす」。8年ぶりのグランプリ奪回は06年松井繁の7年を超える、最長ブランク。かねて「やっぱりグランプリといえば住之江」と語ってきた。ピットまで届くファンの声援、あるいは怒号も-。17年にはゴールした瞬間、このスタンドに目をやり光景を目に焼き付けていた。今年は午前中からファンが列をなし、開門時間を1時間繰り上げる対応が取られたほどの熱気。ナイターで初めて迎えた先頭ゴールは、スタンドに向かって頭を下げ、右手を挙げて応えた。「1回目とまた違う感覚。気持ち良かったですね」。懐かしく、そして新しい雰囲気。住之江だからこそ見えた景色が、そこにはあった。ただ、また次も? との問いには「もうたくさんかな」と笑わせ「このプレッシャーはすごい。久々に味わったけど、すごいです」と、また苦笑した。

30代最後のグランプリ。「リラックスできた」と、6年連続参戦という経験値がもたらした、泰然自若を貫いて制した。同時に、ライバルの強さも痛感した。「みんなエンジンを仕上げてくるし、すごい。なんか、課題ができた優勝」と危機感にも似た感情を口にする。「来年の目標は本当にない。1走1走としか。運と流れで勝てた大会」。真の強さを追い求める桐生の戦いはまだ続く。【山本幸史】