気がつけば全64試合のうちの32試合が終了。29日からは1次リーグ3巡目が始まる。ここで、過去になかった異変に気づいた。リーグ最終戦になっても「消化試合」がないのだ。

4チーム中2位までが決勝トーナメントに進む現行の方式は、大会参加チームが24から32に増えた98年フランス大会から。初出場した日本はアルゼンチンとクロアチアに連敗して敗退が決定。リーグ最終のジャマイカ戦は、敗退決定国同士の「消化試合」だった。

強豪国が2試合で突破を決め、弱小国は2試合で敗退が決まる。強豪が決勝トーナメントに備えて主力を休ませるのは、よくある光景だった。前回のロシア大会では6チームが2試合で突破を決め、8チームの敗退が決まっていた。14年ブラジル大会でも6チームが2試合で突破を決めた。

今大会、2試合で突破を決めたのはフランス、ブラジル、ポルトガルだけ。敗退決定も開催国カタールと次回開催国カナダの2チームだけだ。日本のE組など6組は、全4チームに突破の可能性が残る。見逃せない試合ばかり。ますます寝不足になりそうだ。

ドイツに勝ってコスタリカに敗れた日本のように、ほとんどのチームが好パフォーマンスを2試合続けられない。金星の後は敗戦を喫し、大勝の後は引き分ける。1試合目と2試合目とで、まったく別の顔を見せるチームも少なくない。

全体のレベルが拮抗(きっこう)してきたことも一因。少し前なら、欧州や南米の強豪は余裕を持ってアジアやアフリカ勢に勝った。しかし、今回はサウジアラビアがアルゼンチンを破り、日本がドイツに勝った。韓国もウルグアイと引き分け。どちらが勝ってもおかしくないという試合の連続なのだ。

コンディションの問題もある。開幕戦出場チーム以外、すべて中3日での2戦目。ケガでの欠場や、蓄積された疲労もある。初めて欧州リーグを中断して11、12月に行う大会。例年ならシーズン終了後、一度リセットしてから大会に向けてピークを作るが、今回はシーズン中のハイテンションのまま大会に突入している。

セルジオ越後氏は「プレスのかけすぎで、選手が疲れている」と指摘する。会場は空調がきき、移動の負担も少ない。シーズン中で体も動くから前線から激しいプレスをかけ続ける無理もきく。結果、その疲れが貯まる。「5人交代じゃなかったら、大変だったよ」と越後氏。どの試合も「だらだら感」がない。各チームとも初戦から全開だ。

予測不能な大会は適応力のある強豪に有利かと思っていたが、それだけではなさそう。テンションの高いまま中3日で3試合するのだから、予想外なことも起きる。「ガチンコ」で3巡目を迎えるチームが多いことも、決勝トーナメント以降の結果に響きそうだ。

公平性を保つために同組の2試合が同時キックオフされる3巡目。厳しい試合の連続に、突然パフォーマンスを落とすチームも出そうだ。リーグ戦の勢いのままコスタリカに大勝し、ドイツとハイレベルな試合をしたスペインもお疲れ気味のはず。選手起用も含めていいコンディションで臨めば、勝機もありそうだ。

【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)