FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会はアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。ご存知の通り、ディエゴ・マラドーナを擁して優勝した1986年大会以来、実に36年ぶりの優勝となり、歓喜に包まれました。今回のカタール大会は初めてヨーロッパのシーズンに合わせて行われており、そして初の中東開催となり、初めての試みとなった部分が多い大会でもありました。今回はそのスポンサー面に焦点を当ててみたいと思います。

実は今大会は日本企業によるスポンサーはありませんでした。これは前大会のロシア大会に続くもので、ソニーが2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会の2大会分のスポンサーということでスポンサードし続けてまいりましたが、2020の東京オリンピックを控えたこともあり、2015年で契約を終了しておりました。入れ替わるように2013年の習近平国家主席就任時より徐々にサッカーに力を入れ始めていた中国企業が台頭。2030年のW杯開催をにらんでいるとも言われています。

中国企業は前ロシア大会に続き4社が大会の主要スポンサーに名を連ねました。投じた協賛金は約14億ドル(約1950億円)にもなり、国別のスポンサー金額という視点から見ても最多。メイン会場の建設を手がけ、照明設備や通信設備などでも多くの中国製品が採用されていました。テレビやインターネットを通じた観戦者数は35億人近くになるとされています。スポンサー企業は大きな広告効果を得るのは言うまでもありませんが、このハード面でのサポートが多いのは過去にも数少ないまれな形と言って良いと思います。建設面では大手企業である中国鉄建が現地企業と組み、メイン競技場にもなったルサイル・アイコニック・スタジアムの建設を手がけました。同社が建設を手がけたことからか、同スタジアムの照明や電力システム、通信システムは中国製品や中国企業の技術が使われていました。深セン市洲明科技も同スタジアムに設置されたLED製品を供給。また巨力索具は競技場2カ所の設計、建設に参画したと報道されました。インフラ大手の中国電力建設集団(中国電建)はカタールで太陽光発電所の設置を手がけていることもあり、同社の発電所が大会中の電力供給を支えるということでもありました。その他にも、関連グッズの制作受注は大半が中国に流れたとの報道もあり、広告効果だけでなく実事業での方でも大きくビジネスを展開していたようでした。

その経済面での強さを遺憾なく発揮したといえるカタール大会でしたが、その大会運営面でも確証を得たのか、2036年夏季五輪招致に乗り出す方針を固めたと報じられました。2029年冬季アジア大会をサウジアラビアで開催するというニュースもありました。サウジアラビアの標高2000メートル前後の地域は、冬場は氷点下になるということもあり十分に開催は可能ということでしたが、何よりも絶大な資金力が背景に存在していることは間違いありません。

結局のところ国際スポーツイベントは多大な資金が必要になります。世界規模になると動く金額が大きすぎるが故に付随してしまう不透明な部分もあり、それをどのように払拭していくのかは今後の課題の一つにもなりますが、とにかくクリーンなイメージを保持して欲しいものです。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)