相反する概念は、物事を間違いなく面白くする。
関東サッカー1部リーグの天王山、第15節・南葛SC対東京ユナイテッドFC戦が9月6日に東京・奥戸総合スポーツセンター陸上競技場で開催され、大いに盛り上がった。
■観客過去最多の2355人
2位の南葛から見ると、勝ち点1差で首位の東京Uをホームに迎えての直接対決。誰もが知る風間八宏監督(63)のもとJリーグ入りを目指すプロ集団の南葛に対し、東大卒のビジネス人・福田雅監督(50)率いる由緒正しき社会人チームという構図だ。
この有料試合には過去最多の2355人が集まり、会場は満員となった。
試合は連動性、スピード感あふれる攻撃サッカーを展開した南葛に対し、東京Uは強度の高い守備からカウンターを仕掛けた。個性が異なる両チームの持ち味が存分に出ていた上に、スコアも取っては取られというスリリングな展開となった。両者譲らず2-2の後半45分、途中出場したMF室崎雄斗の鮮やかなシュートが決まった。人材事業大手のリクルートに勤務する男の一撃により東京Uに軍配が上がった。
試合後の両チームの指揮官の言葉も、それぞれの哲学が後ろ盾となった“味のある”内容だった。
■「悲観することはない」
敗れた南葛の風間監督はこう振り返った。
「サッカーが非常に速いし、自分たちの思ったようにはできた。その速いがゆえに、そういうところでミスが今日は出たなというところ。何か悲観することはない。チャンスは作れているし、今日も5点取ろうと思い、取れた試合ですから。そこのところにフォーカスしていければいいかなと思います」
いつもと変わらず、自分たちの表現するサッカーへの自負を口にした。
失点場面はどれも、ボールロストからカウンターを浴びたものだった。一方で攻撃面に目を向ければ、これぞ南葛というものだった。
相手のプレスを物ともせず前にベクトルを向け続け、連動した動きで崩していく姿は敗れてなおインパクトを与えた。攻撃のたびに会場の興奮は高まった。
「お客さんと一緒に我々は作っていくチームなので、やっぱりお客さんが面白いと思うものを我々は作っていて、なおかつそれでしっかり勝てるようにしていく。例えば1-0で勝ったとしても、多分お客さんは来なくなるので。我々はキャプテン翼という母体というかベースがあるので、そこに負けないくらいのおもしろいサッカーをしたい。それで当たり前ですけど、どう勝つかを段々覚えていく。そういう段階だと思います。今日は珍しくミスが出た。それは学べばいいと思います。自分たちの速さを学んでいけば、チャンスはいくらでも作れるようになる。そこは選手層も厚くしなければいけないし、みんなでうまくなってほしいなと思っています」
サッカーとは攻撃と守備のバランスで成り立つ。攻撃の比重を大きくすることで守備のリスクを必然的に下げるという考えがある。
「みんな見てて分かると思うけど、個性がものすごく見えるでしょ、顔が。やっぱり顔が見えるサッカーが僕は一番いいと思うので。顔が見えるからやっぱり点も取れる。顔が見えるからやっぱり相手も怖がるというところもある」
■「勝つなら今日だと」
対して、勝者となった東京Uの福田監督の弁はこうだった。
「サッカーの質としては南葛さんの方が圧倒的に高かったと思います。試合前のミーティングで言ったけど、5回に1回しか勝てない相手なんですよ。僕は風間さんに4連敗しているから、今日勝つために4回負けてきたんだって言った。勝つなら今日だと思っていました」
ライバル心むき出しの一戦。同じ東京のクラブでありながら、プロ路線とれっきとした社会人路線。対極を成す2つのレールは交わることがない。だが互いのプライドはいやが上にも激しくぶつかり合った。
「いつも以上の能力を引き出してくれたのは、南葛ですよ。彼らの気合が半端じゃなかったから、あれによって僕らも引き出された。やっぱり僕らは日々のトレーニングからハードワークをしているので。追い込まれても追い込まれてもまだやれる、と言う僕らの限界まで引き出してくれたのは本当に南葛のサッカーだったし、風間さんだったと思います」
後半途中で追いつかれ、さらに攻め立てられた。それでも守りに入らず、攻めの交代カードを切り応戦した。
「僕らは球際、切り替えと運動量しか練習でやっていない。それ以外に僕らは勝つすべがないから。球際の強さ、切り替えの速さ、そして切り替えた後にゴールまで仕留めるクオリティーはないから、それだったら切り替えてゴールに迫る回数を増やすしかない。何度でも何度でも切り替えてゴールに向かう。そのために僕らは信じられないくらい、トレーニングでシャトルランをしています。だから試合前に言ったんです。“第15回(第15節)シャトルラン大会開幕”って。それで負けたら、明日からもっとシャトルラン増やすぞって言ったら、みんなもういいですっていうくらいに走ってくれました」
ひたすら目標に打ち込むことで人生を切り拓いてきた福田監督らしい言葉。“諸君、狂いたまえ”と弟子たちに発破をかけ続けたのは吉田松陰だが、その教えを大事にする熱血漢の思いが結実した。
■監督の“顔”が彩り加える
両監督の言葉の通り、自分たちのサッカーとは何か、それをどう表現するのかは「水と油」のように2層に分かれている。
ボール保持と非保持のスタイル。ただ、それぞれの過程こそ異なれど、ゴールを奪うという目的は同じ。言うならば山の頂点を目指す上でどういう手段、どういうルートで登るかということ。そこには指揮する者の哲学や人生観、そして矜持までも投影されている。
全国津々浦々、サッカーチームの数だけ監督がいる。その“顔”が見えると、よりサッカーは彩り深くおもしろいものになってくる。【佐藤隆志】








