王国ブラジルに敗北したピッチで、「主役」となるはずだった久保建英は涙を流していた。
誰よりも悔しかっただろうと思う。初戦のオランダ戦での左ひざ負傷により、その後はピッチに立つことがかなわなかった。戦わずして敗れたのだから。
堂安が「差があった」と口にしたが、久保にその実感はないだろう。それはピッチに立った選手だけが口にできる言葉だからだ。そういう思いさえ吐けないまま、涙をこぼしていた。
なぜかW杯との巡り合わせは良くない。
前回のカタール大会は1次リーグでドイツとスペイン戦に先発出場したが、どちらも45分間で途中交代。決勝トーナメント1回戦でPK戦負けしたクロアチア戦に至っては、体調不良によるホテル観戦だった。
当時について「あんまり覚えてないですけど、あんまりいい思い出はなかったと個人的には思います」。ドイツ、スペインを下し躍進したチームにあって、どこか蚊帳の外だった。
21歳だった若者も25歳。押しも押されもせぬチームの中心選手となった。1年前の囲み取材で、カタールの時は「幼さがあった」と振り返ったことさえある。
「幼さがなくなった1つの要因としては、年月が進むにつれて代表選手としての心だったり、いろんなことを教わって人間としてより成長できたっていうのが1つ。あとは選手みんなのレベルがすごく上がって、それにもまれながら僕自身も成長できたっていう2つの部分で、自分に自信がついたと思います」
もともと「俺が、俺が」の自己主張タイプだ。それがプロの年輪を重ねることで周囲を見渡し、協調するようになった。キャプテンマークを巻いたこともあった。今回、負傷離脱した南野拓実の8番を背負ったところにも強い思いが見て取れた。自分がいろんな人の分も頑張るんだと。だから余計に悔しさが募った。
試合後は「残念というより申し訳ないなって気持ちが強いです」とこぼした。
誰もが思っただろう。久保がいたら-。ブラジル戦の結果は変わらなかったかもしれない、ただ果敢にゴールへ挑む姿はチームの大きな勇気となったはずだ。
目標とした「新しい景色」の8強には届かなかった。だが悔しい景色こそが次への糧となる。幼少期から「クライング・ベイビー」と呼ばれたロナウドは、涙の数だけ努力して強くなった。そして41歳となる今、史上最多の6度目のW杯を戦っている。
久保も望めば29歳、33歳、37歳、41歳とW杯は続いていく。まだ2回目が終わったに過ぎない。あきらめなければ目標は逃げていかない。【佐藤隆志】



