メッシのおかげでおもしろいW杯になった。
初戦のアルジェリア戦でのハットトリックに始まり、次々とゴールを重ねた。結果的に39歳になってなお世界のトップに君臨する男に刺激を受け、各国のエースたちが奮起した。特に前回決勝で敗れていたエムバペは、メッシの姿が闘志を燃やすガソリンとなったであろう。
大会期間中、メッシが得点を取ればエムバペも続いた。そのデッドヒートの末、W杯通算ゴール数はそろって最多記録を大きく更新。20点の大台にまで到達した。2人の得点王争いの行方は、最後のこの決勝まで目が離せなかった。
18歳で出場した06年ドイツ大会から6大会連続。W杯を楽しむ上で、メッシは不可欠な選手だった。ただ39歳になる今回は「最後の大会」と位置付けての出場だった。しかしふたを開けてみれば、衰えるどころか、技術、体力、精神力ともにいまだ超一級品だった。
今大会を終え、メッシが何を言うのか? 各国メディアはその言葉を聞こうとミックスゾーンに詰めかけた。しかしアルゼンチンの選手は一向に現れず、接点を持てない奥側の動線からバスへと向かった。
慌てて外へ飛び出し、アルゼンチンの移動バスの近くへ向かったが、もうメッシの姿はなかった。ほかの数選手がバスに乗り込んでいく姿だけは見えた。言葉を発することなく、大会から去ることになった。
もちろん敗れたショックで言葉が出ないのかもしれない。また、すぐには今後のことを考える気持ちもないだろう。ただ、準優勝に終わったが、自分にとってどういう大会だったのか? 自分のプレーについてどう感じているのか? 知りたいことは山ほどあった。
願わくば、また4年後のW杯にチャレンジしてほしい。39歳であのレベルのプレーができるのであれば、4年後に43歳となったとしても、また違った味を出してプレーができるはずだと思う。
94年アメリカ大会に出場したカメルーン代表FWロジェ・ミラは42歳39日というW杯最年長ゴールを記録している。メッシが4年後、史上最多7度目のW杯出場となればミラの記録を塗り替えるのではないか。ペレ、マラドーナを超えるサッカー史上最高傑作の選手であれば、そんな夢を世界中のファンに見せてくれるはずだ。
メッシのプレーの根源は負けず嫌い。ならば、そのハートに再び火を付けるようなライバルたちの活躍に期待したい。第1回大会からちょうど100年記念となる次回のスペイン・ポルトガル・モロッコの3カ国開催。メッシのいないW杯なんて、メインディッシュのないコース料理のようなものだ。【佐藤隆志】



