サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」を率いる佐々木則夫監督(57)が、開催中の女子W杯カナダ大会後も続投する。日本サッカー協会が、同監督との契約を来年1~3月ごろに予定されるリオデジャネイロ五輪アジア最終予選(開催地未定)まで延長したことが27日、分かった。11年女子W杯ドイツ大会優勝などW杯2大会、五輪2大会を率いた指揮官に、W杯出場以上に狭き門の「アジア2枠」の出場権獲得を託すことになった。

 佐々木監督の手腕に、リオ五輪出場権獲得が委ねられた。日本協会は、今秋までの契約を来年3月まで延長した。協会関係者は「五輪の出場権はアジアで2つしかない。監督を代えて臨むにはリスクもあるし、準備期間も短すぎる。女子サッカーの今後を考えたうえでも出場権を逃すことは許されない」と理由を明かした。佐々木監督も当初は契約満了で勇退する意向だったが、強い責任感と女子サッカー発展への思いから受諾した。

 開催中の女子W杯カナダ大会にはアジア勢5カ国が出場。16強には日本、中国、オーストラリアと韓国が進出し、8強には3カ国が残った。だが、16年リオ五輪のアジア枠は2枠しかなく厳しい争いが予想される。W杯後は7月12日になでしこリーグが再開され、8月には国内組が主体となって臨む女子東アジア杯(中国・武漢)ではライバルの北朝鮮、韓国、中国と対戦する。佐々木監督にとっては五輪予選に向けた新戦力を試す場ともなりそうだ。

 今日28日午前5時開始の準々決勝オーストラリア戦の前日会見で、佐々木監督は「アジアからベスト8に3チーム。お互いが力をつけて戦うことが楽しみ」と、アジア勢には負けられないという決意を見せた。さらに「アジアの女子サッカーのレベルの高さを、この世界(W杯)でアピールすることも大事」と、アジア勢の強さを示していく重要性も説いた。

 日本協会内では、20年東京五輪に向けた監督候補に、昨年4月のU-17(17歳以下)女子W杯コスタリカ大会で日本を優勝に導いた高倉麻子氏(47=U-19日本代表監督)を推す声が多い。だが、リオ五輪の予選は佐々木監督体制で臨む。11年女子W杯ドイツ大会優勝、12年ロンドン五輪銀メダルなどの実績を残した指揮官に、頼らざるを得ないという判断になった。

 ◆佐々木則夫(ささき・のりお)1958年(昭33)5月24日、山形県尾花沢市生まれ。東京・帝京高で主将として高校総体優勝、高校選手権4強。明大を経て電電関東サッカー部(後にNTT関東→大宮)でプレー。91年に現役引退後、NTT関東監督や大宮強化育成部長、ユース監督を歴任。06年なでしこジャパンのコーチとなり、08年監督就任。同年東アジア選手権で女子代表初の国際大会優勝。10年広州アジア大会でアジア初制覇。11年女子W杯ドイツ大会優勝。12年ロンドン五輪銀メダル。家族は淳子夫人と長女千尋さん。175センチ。

 ◆リオデジャネイロ五輪アジア最終予選 1カ国で集中開催するセントラル方式。出場枠は2つ。FIFAランク上位の日本、北朝鮮、韓国、中国、オーストラリアの5カ国は、1次、2次予選を免除。今年9月14~22日に開催される2次予選(タイ)に出場するタイ、ベトナム、ミャンマー、ヨルダン、台湾の最上位国が加わり、全6カ国が総当たりで争う。開催時期は、FIFAの公式ホームページでは女子国際Aマッチデーの1月18~26日とされているが、日本協会では2月下旬から3月上旬を想定し、大阪を候補地として招致に乗り出している。