4大会連続の五輪出場を目指す女子日本代表、なでしこジャパン(FIFAランキング4位)が想定外の黒星発進を強いられた。オーストラリア(同9位)に1-3で完敗。引退した澤穂希さん(37)が見守る中、0-2の前半終了間際に新10番のFW大儀見優季(28=フランクフルト)が得点したが、勝利には結びつかなかった。同国に国内戦で初めて敗れ、2枠の五輪出場権へ早くも黄信号がともった。2日の第2戦は韓国(同18位)と対戦する。

 かつての世界女王の姿ではなかった。ピッチに歓喜の山をつくったオーストラリアを尻目に、なでしこジャパンが頭を下げる。地の利を生かせず、まさかの黒星発進。大阪に詰めかけた約5000人の前に想定外の光景が広がった。主将のMF宮間は「これが今の自分たちの実力。まだまだ足りない」と肩を落とした。

 前途多難の幕開けとなった。前半25分、警戒していたFWデバンナに頭で決められ後手に回ると、40分にはMF阪口の横パスが主審に当たって相手への絶妙なパスになるハプニング。大儀見の得点で1点差に迫るも、後半33分にとどめを刺された。右サイドを破られてカバリングに追われ、がら空きとなった反対サイドのMFゴリーに決められた。オーストラリアに敗れるのは10年5月27日のアジア杯準決勝(0-1)以来約6年ぶり。国内では23試合目で初めて負けた。さらに3失点以上となれば84年10月22日の西安招待(2-6)以来32年ぶり。屈辱まみれの初戦となった。

 「澤ロス」から立ち直れなかった。国際Aマッチ205試合出場の澤さんが昨季限りで引退。ベンチにも不在となって初めての大会で修正力の乏しさを露呈した。先発11人中10人を昨年のW杯経験者に託したが、穴は容易に埋まらない。NHKの中継にゲスト出演した澤さんから「選手の距離が遠い。守備の奪いどころがはっきり分からない」と問題点を指摘されたが、以前ならピッチレベルで受けられたアドバイスだった。

 宮間を左MFからボランチへ、澤さんの位置に宮間を下げざるを得なくなったことも、攻撃の起点を失い2点目を奪えない要因となった。佐々木監督が「死守する気持ちで勝られた」と言った姿勢も澤さんの持ち味だった。指揮官は「会場でパワーを送ってくれたと思うし、選手も志を持って戦ったが勝てなかった。申し訳ない」。率直に謝るほど頼っていた存在だった。

 わずか2枚の出場切符をかけて10日間で5試合を戦う過密日程。その初戦を落とし、早くもリオ五輪出場に黄信号がともった。第2戦は明日2日、中1日でW杯16強の韓国と戦う。「4連勝しか、もう道はない」と宮間。その4試合で澤ロスを克服しなければ最悪の結末も近づく。【木下淳】

 ◆大会方式 日本、オーストラリア、韓国、中国、ベトナム、北朝鮮の計6カ国が参加。総当たりで、上位2カ国がリオ五輪出場権を獲得する。順位決定は勝ち点、得失点差、総得点の順。大阪市にあるヤンマーと金鳥スタの2会場で行われ、日本戦はすべて金鳥スタ。