サッカー日本代表と20年東京オリンピック(五輪、U-21)代表を兼任する森保一監督(49)が28日、就任後初の公式業務として福島・Jヴィレッジ(楢葉町、広野町)の再始動記念式典に出席した。福島第1原発事故の復興収束拠点となった聖地が、この日から一部の営業を再開。既に五輪代表は直前合宿をすることが決まっているが、指導者の原点にもなったピッチの再生に感激し、A代表のキャンプも実施したい希望も口にした。

 森保兼任監督の心が揺り動かされた。11年3月の東日本大震災から約7年4カ月。作業車が芝を踏み、仮設寮が建っていたスタジアムが、かつての姿を取り戻していた。青々とした芝生に新しい宿泊棟。式典前に見学し「震災があったことがウソのように、素晴らしくきれいに整備されていて。再始動、本当におめでとうございます」と頭を下げた。

 03年にベガルタ仙台で引退し、04年からサンフレッチェ広島と日本協会で育成年代を教えるコーチになった。その研修先が、ここJヴィレッジ。「上野からスーパーひたちに乗って、よく来ましたね」。泊まり込みで指導談議に没頭し、3人の息子もプレーした場所だ。後に、日本代表と五輪代表の「全権監督」に上り詰める男の原点になった地を、兼任後初の公式業務先として再訪。「日本のサッカーを発信し、高めてきた場所が復興を遂げた。再び盛り上がりを創出、発信していける。その日が来たことを本当にうれしく思います」と再始動を喜んだ。

 Jヴィレッジでは、20年東京五輪の男女サッカー代表が事前合宿を行うことが決まっている。その“下見”中に新たな希望も湧いてきた。「スケジュールを見なければ…」と前置きした上で「A代表もいつか、ここに来て活動できたらいい」。現行の国際Aマッチ期間では難題も多いが「多くの方に見に来てもらい、発信したい。まだまだ苦しんでおられる方々への勇気、励ましのメッセージになれば」と使命感を口にした。

 日本協会は、具体的な時期こそ未定だが、A代表と五輪代表の合同合宿も検討している。この場所は、99年にトルシエ兼任監督がA代表候補とU-22代表候補の合同キャンプを行い、06年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会の直前にはジーコジャパンが練習した。「まだまだ癒やされていない方々はいますし、寄り添っていきたい」と話す森保監督は、同じ東北の仙台で現役を退いただけに思い入れも強い。いつか必ず合宿し、22年W杯カタール大会へ向かう。【木下淳】