<キリンチャレンジ杯:日本0-0トリニダード・トバゴ>◇5日◇豊田ス

世界の強豪と戦う上で、3バックのオプションは欠かせない-。サッカー日本代表は森保一監督(50)が就任後、初めて3バックを採用し、5日のトリニダード・トバゴ戦を0-0で終えた。

日刊スポーツのサッカー担当記者が独自の視点で掘り下げる「Nikkan eye」では、過去に試しては消えた「3バックの確立」を訴えたい。チームは9日にエルサルバドル戦(ひとめぼれスタジアム宮城)を迎える。

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3バックで臨んだ一戦は、スコアレスドローに終わった。無得点も、ほとんどの選手は「思ったより機能していた」とポジティブに受け止めていた。特に、ワーツドカップ(W杯)ロシア大会を経験した選手は「監督としては、ベルギー戦が残っているだろうし。3バックにトライするのは先を見れば大きなこと」と強調した。

昨夏のW杯ロシア大会決勝トーナメント1回戦のベルギー戦は記憶に新しい。当時FIFAランク3位のベルギーに日本は2-0とリードしたが、ベルギーは後半20分に長身のMFフェライニ、MFシャドリを投入。中央の高さを生かすサイド攻撃を仕掛けてきた。当時の西野朗監督は逃げ切りを図るべく、ベンチでDFを1人投入し相手の攻撃をはね返すプランを考えたという。だが、西野体制で3バックは昨年5月の親善試合ガーナ戦で1度試しただけだった。結果的に、実現できなかった。

3バックは守備時に、左右ウイングバック(WB)が最終ラインに下がり、5バックになることで、より守備を固めることができる。勝負事に「たら・れば」はないが、ベルギー戦のラスト20分で3バックを発動できていたら、同点に追いつかれることはなかったかもしれない…。当時、コーチでベンチ入りしていた森保監督も、世界の強豪相手に、その重要性を感じたのだろう。今回のトリニダード・トバゴは1トップ。1トップの相手に守備人数が多い3バックは一見、ミスマッチにも思えるが、指揮官はあえて、テストに踏み切った。

選手も監督の意図と3バックの長所を理解してピッチに立っていた。DF酒井宏は「(3バックは)クロスを上げさせないことができるし、中も人数がいる。強いチームにもしっかり対応できると思う」とその将来性に目を向け、DF長友は「(相手が)パワープレーで来たとき、オプションを持つことが強み。ベルギー戦も違う結果になっていたかもしれない」と話した。

過去に、日本はザッケローニ監督、西野監督と3バックをテストしたが、自然消滅していた。従来の「4-2-3-1」は前線に攻撃選手が4人いるが、「3-4-3」は3人。前線の人数が減る分、攻撃にブレーキがかかる印象だった。だが今回は、所属クラブで3バックを経験している選手が増えていること、左MFの中島、右MFの堂安が個で打開する力を発揮し、過去のようなぎこちない停滞感は感じさせず、シュート25本とゴールに迫った。

ロシアの教訓を22年のカタールに生かすなら、今度こそ3バックを戦術の1つとして確立させるべきだ。森保監督は広島を指揮した際、3バックの堅守を武器に「したたかな戦い」でリーグを3度制覇した。3バックのスペシャリストでもある。結果も大事だが、長い目で見れば戦術の引き出しを増やすことが日本を強くすることになる。次戦のエルサルバドル戦にも3バックを再びトライし、A代表の3バック経験者を増やしてほしい。【岩田千代巳】