サッカー日本代表は、11日に行われた国際親善試合・セルビア戦(ノエスタ)を1-0で勝利した。欧州の強豪国に対して、熊本・大津高出身のDF谷口彰悟(29)DF植田直通(26)の存在感が際立った。今回の日刊スポーツのサッカー担当記者が独自の視点で掘り下げる「Nikkan eye」では、「大津高ライン」について記す。

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地球の裏側から、称賛の声が届いた。元ブラジル代表のドゥンガ氏は「日本は守備がとても良い」と言った。ブラジルからリモートで、セルビア戦のテレビ中継の副音声にゲスト出演。かつてジュビロ磐田でプレーしたこともある「闘将」は、欧州の強豪・セルビアを無失点に封じた日本の守備陣を評価した。

中心人物は谷口、植田のCB2人だった。相手の1トップには、FWマカリッチ。セルビア1部の今季の得点王に対し、圧倒的な対人の強さを誇った。くさびに入る浮き球に対し、両CBはことごとく頭ではじき返した。球際でも当たり負けせず、起点を封鎖。結果的にマカリッチは前半で途中交代。谷口、植田が防波堤となり、ベンチに追いやった。

「同校ライン」だからこそ、良質なコンビネーションを築き上げた。ともに熊本・大津高出身。3歳違いのため、高校では入れ違いだったが、後輩の植田にとって「2個上は神。それより上は、それ以上。(谷口)彰悟さんは有名な存在だったし、憧れていた」という存在が先輩・谷口だった。谷口にとっても「フィジカル、メンタル的にもすごみが出てきている。僕も学んでいかないといけない」と後輩に刺激を受ける。

「大津の血」が互いを生かした。ビルドアップを得意とする谷口は、時にボランチの位置に近づき、短いパスを交換。CB以外にボランチもこなす万能型は、縦パスも効果的に入れ、攻撃の糸口を見いだした。そんな時には植田はフォローに回り、攻撃、守備の両面で互いを支え合った。3日に行われた東京五輪世代のU-24日本代表との試合でもタッグを組み、無失点という結果を残した。着実に「大津ライン」の成熟度は上がっている。

日本代表の不動のCBは吉田、冨安のコンビ。今回は五輪参加のため不在だったが、今後もいない可能性だってある。警告処分による欠場、故障による離脱…。この先、ワールドカップ(W杯)最終予選、本大会を目指す上で、何が起きるか分からない。大津卒業後、筑波大を経て川崎Fに入団した谷口。反対に同高から、鹿島へと高卒からプロ入りした植田。進んだ道のりは違えど、体内に宿る「大津魂」は不滅。「谷口&植田」の2人が「吉田&冨安」のバックアップ要員として、着実に力を伸ばしている。セルビア戦は、2人の存在感を証明した一戦でもあった。【栗田尚樹】