【シドニー22日=岡崎悠利】サッカーのW杯カタール大会アジア最終予選第9戦で、B組2位の日本代表は24日に同3位のオーストラリアと対戦する。

勝てば7大会連続のW杯出場が決まる大一番に向け、主将のDF吉田麻也(サンプドリア)、MF伊東純也(ゲンク)ら主力選手が合流。チームは非公開練習を行った。オーストラリア在住で現地のサッカー事情に詳しい元日本代表FWの田代有三氏(39)が日刊スポーツの取材に応じ、「日本が負ける相手ではない」と試合の展望を語った。

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田代氏ははっきり言った。「いつものようにやれれば、負ける相手ではない」。実力は日本が明らかに上だとみている。

両国の因縁は深い。06年のW杯ドイツ大会でジーコジャパンが終盤に3失点し、逆転負けを喫した。以降、アジアを舞台に死闘を繰り広げてきたライバル国だ。そのオーストラリアのスタイルはここ数年で変化しているという。

巨漢FWビドゥカらプレミアリーグで活躍した選手がそろい、かつてはフィジカルを生かし、ロングボールを軸にした戦い方だった。それがポゼッションを高めてパスをつなぐ戦い方を志向するようになった。田代氏はこの変化について「日本の後追いのようなところもある」と表現した。

横浜を指揮して19年にはJ1優勝に導いたポステコグルー前監督がチームを率いた13年から、現在の戦術が取り入れられた。それが徐々に現地のプロリーグにも浸透したのだという。「(強豪の)シドニーFCが5年ほど前からつなぐことを始めた。現在はもっと増えている」と説明する。

その後、オーストラリアでも「ロングボールを蹴るのは恥ずかしい、という意識が出てきた」。田代氏にとって日本では、自身が現役だった10年以上も前から選手たちが持っていた感覚だという。そして取り組んだ時間の差が、そのままチームの成熟度となって表れるのだという。

その上で、オーストラリアの現状について「つなぐことに固執するところがある。蹴るところは蹴るという判断がもう少し整理されたら、もっと強くなるとは思う」と補足した。

一方で、パスワークにこだわるあまり、もともと相手チームへの脅威となっていたフィジカルの強さや高さという迫力を失うことにもなっている。さらにつなぐ技術も日本と伍(ご)するにはまた至っていないようだ。「日本のような速いプレッシャーからは逃げ切れないと思う。切り替えが速い、いつもの日本なら負けない」と断言する。

欧州で活躍する選手を見比べても、アウェーとはいえ日本がおそらくボールを支配するだろう。一方で、フィジカルの脅威がなくなったわけではない。「技術はJリーグなら普通のレベル。ただパワーや一瞬のスピードなど、肉弾戦になれば力は発揮される」。

同点のまま終盤に突入し、パワープレーに出られる方が日本にとってはやっかいだ。そしてアウェーで勝ち点1がノルマの日本にとって、試合の終わらせ方が最も重要であり、勝負のポイントとなりそうだ。

「前線にはデュークとか、技術がなくてもがむしゃらな選手がいる。(ロングボールを)蹴られてこぼれ球から速攻というのが怖いと思う」

勝てばW杯が決定する大一番。20年1月に田代氏が現地で立ち上げたサッカースクールに通う生徒たちも、多くが当日は試合を観戦に訪れる予定だという。

「W杯が決まる、そんな瞬間はなかなかない。子どもたちは日本代表にしか興味がないくらい、憧れている。記憶に残ると思うし、そうなってほしい」とエールを送った。

 

◆田代有三(たしろ・ゆうぞう)1982年(昭57)7月22日生まれ、福岡市出身。福岡大大濠高-福岡大。大学時代から特別指定で大分、鳥栖でプレーし、05年から在籍した鹿島ではリーグ3連覇を経験。08年には日本代表にも招集された。その後は山形、神戸、米MLS挑戦を経てC大阪。17年3月からオーストラリア2部相当のウロンゴンに加入。18年に現役引退し、同年に永住権を取得。ウロンゴンのアシスタントコーチも務めた。20年1月にサッカークラブ「Mate FC」を立ち上げ、6~12歳の子どもの指導を行う。J1で175試合48得点、リーグカップ37試合10得点、J2で73試合17得点、J3で1試合0得点。国際Aマッチ3試合0得点。現役時代は181センチ、77キロ。