【ジッダ(サウジアラビア)21日=岡崎悠利】サッカー日本代表MF久保建英(22=レアル・ソシエダード)が役者の違いを見せた。重苦しい空気が漂った0-0の前半32分に、豪快な先制ミドル弾。チームを勢いに乗せると、後半開始早々にはトリッキーなアシストも記録し、日本代表最多タイの8連勝に貢献した。森保一監督(55)は格下相手の2次予選でもフルメンバーを招集。大方の予想通り一方的な展開となった中でも22歳が見どころを作り、26年W杯北中米大会に向け、連勝スタートの立役者となった。

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紅海の水平線に日が落ちていく美しい夕焼けの中で始まった一戦。国内放送なし、勝って当たり前の相手。注目度が下がってもおかしくない90分間を、久保が華やかなゴールラッシュに仕立てた。守りを固めるシリアから得点に至らない中、迎えた前半32分。右寄りからドリブルで内に持ち込むと、コンパクトに左足を振り切った。低い速い弾道のシュートが、ゴール右隅を射貫いた。「あそこで1発決めることが出来たのは、相手のプランを崩すためにもよかった」。この一撃で流れを引き寄せ、約6000人の相手サポーターを沈黙させた。

引いて守る相手との戦いで、最も重要なのが先制点。約30分間、押し込みながらも取り切れないと見るや、ミドル1発でシリアの戦意をへし折った。トップ下で先発したこともあり、この試合で欧州でも相手に脅威を与えているサイドからのカットインでのチャンスは1度だけ。だからこそ「確率的なところで、1発で決めることができたのは成長しているのかな」と納得の表情を見せた。

選手として出来る最大限の仕事をピッチで示した。国内で放送がなかったことに「個人的には、国と国の優しさみたいなものをもっと出してくれたら、日本のみんなも試合を見ることができてハッピーだったのかなと。選手があまり言えることではないけど」と言葉を選んだ。その上で「日本の試合が当たり前に地上波でやってほしい思いはある」とも言った。見る人に希望を与えるのが日の丸を背負う者の使命。その役割をプレーと結果で果たした。

温存された前戦ミャンマー戦と同じ5-0での大勝。相変わらずの破壊力を見せた。「2連勝で締めくくれたのは大きい。これをチームに持ち帰ってまた頑張れたら」。名実ともに日本サッカーを担う22歳は、輝きを増し続けている。

▼連勝記録 日本は6月のエルサルバドル戦から国際Aマッチで過去最多に並ぶ8連勝。岡野俊一郎監督時の70年、オフト監督時の93年、加茂周監督時の96年に続く4度目。今回はアウェーでW杯優勝経験国ドイツからの価値ある白星を含む。70年は8戦全てアジア勢、93年は連勝がスタートした米国戦後は全てアジア勢との対戦だった。96年の8連勝はユーゴスラビア、メキシコ、ウルグアイ、ウズベキスタン、チュニジア、シリア、ウズベキスタン、中国が相手だった。