ネクスト原川よ、現れろ! U-23日本代表は29日(日本時間30日未明)、パリ五輪アジア最終予選兼U-23アジア杯カタール大会準決勝でイラクと対戦する。勝てばパリ五輪切符を手にする大一番。果たしてパリに導くゴールを決めるのは誰か。16年のリオデジャネイロ五輪最終予選で、今回と同じイラク相手の準決勝で“五輪決定弾”をたたき込んだ東京MF原川力(30)が、伝説のゴールを振り返りながら若きサムライたちにエールを送った。

リオ五輪切符をつかみ取る一撃を決めた原川は、後継者の出現を待ち望んでいる。「俺といったらこのゴール、みたいなキャリアの中でパッと言えるゴールがあるのは選手としていい」。おぼろげな記憶をたどりながら、あのゴールの価値を振り返った。

日本が8年前にアジア最終予選を戦った地カタールで、再びイラクと五輪出場権を争うことが決まった。前回は16年1月26日。歓喜は試合終了間際に訪れた。1-1の後半追加タイム3分、南野拓実の右クロスを相手GKがパンチング。ペナルティーエリア付近までスルスルと駆け上がった原川が右足でトラップし、ステップで足を入れ替えて左足ボレー一閃(いっせん)。ボールはゴール右に突き刺さった。

この大会屈指のハイライトとなった一方で、ヒーローの思い出は拍子抜けするほどあっさりしていた。「よう聞かれるけど、全然覚えていない(笑い)」。改めてそのシーンを見ても「決めた瞬間どうやったかな…。あんまりほんまに覚えてない」と申し訳なさそうに言った。当時の試合直後のコメントも「あまり覚えていない」。まさに無我夢中の決勝点だった。

16年のチームは「勝てない世代」と言われていた。U-20W杯出場を連続で逃し、五輪出場を危ぶむ声も多かった。連続出場も重圧となっていた。それでも遠藤航主将を中心にまとまり、6連勝で最終予選を駆け抜けた。原川も得点シーンこそ覚えていないが、恩師や両親らの反応は記憶している。「サッカーをやっていてよかったなとか、恩返しになったな、とかはありました」。五輪本大会メンバー18人入りにつながる“縁起弾”にもなった。

29日の一戦は、勝てばパリ行きが確定する大勝負。経験者として心得を明かした。「一発勝負はむずいですよ。普通のJリーグでやるのと全く別物なので、割り切り方って大事なんじゃないですか」。8大会連続の五輪出場へ、原川に続き歴史に名を刻むのは、果たして-。【佐藤成】

◆原川力(はらかわ・りき)1993年(平5)8月18日、山口市生まれ。元日本代表FW久保裕也とは山口市立鴻南中の同級生でともに京都ユースに進む。京都、愛媛、京都(いずれもJ2)、川崎Fを経て17年鳥栖に移籍。21年からC大阪で、23年夏に東京へ期限付き移籍。24年から完全移籍に移行した。16年リオデジャネイロ五輪代表。J1通算192試合20得点。175センチ、72キロ。