<ロンドン五輪アジア最終予選:日本1-0オーストラリア>◇第3戦◇5日◇中国・山東スポーツセンター

 MF阪口夢穂(23=新潟)が高い戦術眼を発揮し、チームの攻撃を支えた。前半の数多くあったチャンスは、ほとんど阪口が起点となり、オーストラリアを苦しめた。大黒柱のMF沢が「彼女がいるから自由に動ける」と絶大な信頼を寄せるパートナー。女子日本代表初代監督の鈴木良平氏(62)も「広い視野と判断力は、ものすごい能力のある選手。チームとして彼女の能力を最大限に生かせれば、日本はもっと強くなる」と非常に高く評価した。

 パスが阪口を経由したとき、なでしこジャパンのチャンスは広がる。

 前半から日本は相手ゴールに迫った。9分、MF宮間のパスに反応したFW永里優がシュート。同17分にはDF近賀のクロスを永里優がヘディングで折り返し、FW川澄がシュート。同26分にはMF沢、近賀、永里優とボールをつなぎ、永里優の左足シュートは左ポストを直撃。

 いずれも得点には至らなかったが、決定的なチャンス。すべて阪口のパスが起点だった。「プレッシャーが甘かったので、前に急がずつなぐことを意識した」と振り返った。女子W杯ドイツ大会でも、中盤でのビルドアップの要となり沢をサポートし、優勝の原動力となった。

 鈴木

 ハイライトシーンにはおそらく出てこないが、阪口にボールを預けたときに、数多くのチャンスが生まれていた。

 オーストラリア戦を分析し、阪口のプレーの質の高さを非常に高く評価した。

 相手に寄せられれば、簡単にはたく。いいポジションを取っている選手を常に視野に入れ、必ずパスを供給する。前を向いたら、縦にラストパスを通せる。そんな阪口にチームメートも次々と賛辞を贈った。

 沢

 今日は、後半攻めに専念したけど、後ろは阪口がしっかりボールを奪ってキープをしてくれるので、完全に任せました。

 宮間

 阪口は長短両方のパスを出せるので、韓国戦より攻撃にリズムが出た。

 攻撃のキーマンとなる選手たちを支え、攻守の切り替えの最も重要な部分をほぼ完璧にこなした。ザッケローニジャパンの遠藤をほうふつとさせる、まさになでしこジャパンの心臓とも言える働きを見せた。

 苦労人だ。所属していたTASAKIが不況で休部となった。09年に移籍した米国プロリーグ、インディアナでは左ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂の重傷を負い失意の帰国。10年に新潟に移籍し、パソコンに使われる材料などを製造するナミックス(新潟市)でパートをしながらサッカーを続けてきた。

 それでも鈴木氏はチームとして、阪口の能力を生かし切れていないと指摘する。特にDFラインに注文をつけた。

 鈴木

 最終ラインの選手はボールを持ったら、まず阪口を見て、パスを出すことを徹底した方がいい。日本のチャンスはもっと広がっていく。

 派手ではないが、今後の日本の飛躍に不可欠な選手。残り2試合も、阪口から目が離せない。