【ドーハ(カタール)29日】「TAKE」が“奇跡の法則”を再現する。日本代表(FIFAランク21位)は12月1日、1次リーグ突破をかけ、スペイン代表(同7位)と対戦する。MF久保建英(21=レアル・ソシエダード)は満を持しての先発が有力。初戦ドイツからの金星は、ブンデスリーガコンビの堂安&浅野から生まれた。ドイツにはドイツ勢、スペインにはスペイン勢-。同国1部リーグでプレーする唯一の男が、勝手知ったる相手から2度目の歓喜への1発を奪う。

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2度目の大番狂わせは「TAKE」久保の左足にかかっている。ドイツ相手には堂安、浅野のブンデス勢がそれぞれ得点。敵を知ることがいかに大きいかが、ゴールという形で示された。そして迎える大一番の相手、スペイン代表を誰よりも理解するのが久保。メンバーの半数以上が、かつての同僚やリーグで何度も対戦するなど、勝手知ったる選手たちだ。特徴も、弱点も、見えている。

満を持してピッチに向かう。ドイツ戦は前半で交代。逆転の瞬間は大興奮でベンチを飛び出したが、試合後は「難しい。もう少し個人的に何とかできた部分もあると思う」と悔しさもにじませた。「W杯は毎回ヒーローが変わる」。言い聞かせるようにして臨んだコスタリカ戦は出番がなかった。次こそ自分の番-。スペイン戦に期する思いは格別なものになった。

三度目の正直になる。東京五輪では大会前の親善試合、そして本大会準決勝で対し、敗れた。バルセロナ下部組織時代の同い年DFガルシアら、今回の代表には五輪メンバーが7人が選出されている。「死ぬほど悔しかったけど、出せるものは全部出したので涙も出てこない」と実力差を認めてから約1年半。現在スペインリーグ3位のRソシエダードでスタメンを張るまでにレベルアップした。3度目の対戦は、“リベンジ”にはこれ以上ない舞台。オーバーエージで東京五輪に参加したMF遠藤は、右膝痛で欠場が濃厚。その思いも背負う。

自身のサッカー人生と、切っても切り離せないスペイン。五輪では決勝進出をかけて戦い、W杯では決勝トーナメント進出をかけた生きるか死ぬかの戦いになった。ドイツ戦後に「奇跡は信じている人にしか巡ってこない」と言ったTAKE。その左足で、1次リーグ突破という扉を、こじ開ける。【岡崎悠利】

◆東京五輪の日本-スペイン戦VTR 準決勝で対戦。日本はトップ下に久保、右に堂安、ボランチに田中と遠藤。最終ラインはセンターバックに板倉と吉田、右SBに酒井と今大会にも選出されているメンバーが並んだ。試合は同じくW杯メンバーであるスペインのMFペドリ、MFオルモらを中心としたパスワークに防戦一方となった。久保は前半30分すぎに左から切り込んで右足で、後半にも得意の左足で狙うなどチーム最多3本のシュートを放った。しかし準々決勝でPK戦の激闘をこなした消耗は激しく、延長戦の開始時に交代。チームは同後半10分にFWアセンシオに決勝点を決められて力尽き、0-1で敗れた。