日本(FIFAランキング24位)が強豪スペイン(同7位)を破り、E組1位で2大会連続の決勝トーナメント(16強)進出を決めた。川崎フロンターレのジュニアの監督時代、MF三笘と田中を指導した高崎康嗣氏(52=J3宮崎監督)は、教え子2人が絡んでの決勝点を感慨深く見守っていた。

高崎氏 薫(三笘)はギリギリまでプレーをやめない。特に、チャンスが少ないのは分かっていただろうし。ましてや、堂安がボールを持って、あのラインにパスが出るのも分かっていたと思う。全然、不思議でも何も感じなかった。テレビで一瞬、真ん中だれかな? 碧(田中)だろうと思って見ていた。碧はゴール前に入れるから。

田中は、ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア最終予選で、初先発初得点を決め崖っぷちの日本を救っている。川崎フロンターレ時代も、プロ初出場初得点など「持ってる男ぶり」を発揮してきた。本人も以前から「1試合に1回、チャンスくるんですよ。なぜか分からないですけど。それを決めるか決めないかなんですけど」と話しているほどだ。高崎監督はジュニア時代から、田中が要所でゴール前に顔を出すことは必然だと感じている。

高崎監督 碧は小さい時から、ボックス・トゥー・ボックス(自陣ペナルティーエリアから敵陣ペナルティーエリアまでプレーして攻守に貢献すること)ができる才能はずっとあった。前後にいっぱい走って、何げなくゴール前にいる。あそこに入れるのが碧なの。いるんじゃなくて、入っていける。

三笘の折り返しが、ゴールラインを出ているか否か。VAR(ビデオ・アシタントレフェリー)の判定がくだるまで、画面の前にいた高崎氏もドキドキしたという。

途中出場の三笘は、守備面でも多大な貢献をした。田中も同様だ。川崎Fのジュニア時代、高崎氏は守備面について「相手の顔と顔がぶつかる直前まで寄せきりなさい」と指導してきた。一見、けがにつながるように思えるが、けがは横の交錯が多く、正面衝突では子どもの体重ではけがをしにくいという。遊びながらの1対1の練習は常。相手の重心や動きを見て、逆を取る動きも自然と身に付いていった。高崎氏は「薫は守備がうまい。薫と碧はボール奪取能力が高かった。相手の動きも見えているところがある。守備ができないと、プレミアリーグでは使われない」と話す。

試合後、田中と三笘が抱き合い、同じく川崎Fのジュニア時代に指導した板倉は泣いていた。板倉の涙を見て、もらい泣きしそうになったが「まだベスト8を達成していない。ちょっと早いかな」とこらえた。試合後、三笘には「ナイスアシスト」、田中には「あそこにいるのはお前だと思った」とメッセージを送った。板倉にも勝利の祝福のメッセージを送った。3人とも、返事が戻ってきた。ドイツ、スペインを下しての首位突破。高崎氏は「それぞれが、それぞれに融合して、みんなの勝利でしょう。感慨深いというよりは、良かった。うれしいよね」としみじみ語った。【岩田千代巳】