FA杯決勝が14日にウェンブリー競技場で行われた。リバプールが0-0からのPK戦でチェルシーを6-5で破り、16季ぶり8度目の優勝を果たした。

少し残念に思ったのが、チェルシーのデンマーク代表DFアンドレアス・クリステンセン(26)が大事な一戦を欠場したこと。英メディアの報道によると、同DFはけがをしているわけではなく、試合当日の朝、トゥヘル監督に「出場できる状態にない。メンバーを外してほしい」と申し出たのだという。

宿舎ホテルから去って行ったクリステンセンに対し、他の選手たちは驚き、困惑を隠せなかったようだ。

試合は同DFの代わりにDFチャロバーが先発。延長戦の途中からチャロバーに代わって主将のアスピリクエタがピッチに立った。

そのアスピリクエタがPK戦でキックを外したのはクリステンセンには何の関係もないが、クリステンセンの不在がトゥヘル監督のゲームプランに影響を与えたのは間違いないだろう。

クリステンセンがメンバー入りを“拒否”したのはコンディションに問題があったのか、それとも心はすでに来季からの5年契約で合意したと報じられているバルセロナへと行ってしまっていたのか。それは本人しかわからない。だが優勝に貢献し、トロフィーを置き土産にして新天地に旅立つ方がストーリーとして美しかったのではないだろうか。

3-0で勝った11日のリーズ戦ではフル出場しているクリステンセンだが、1-0で勝利した4月24日のウェストハム戦では今回のFA杯決勝と同様に直前で出場を取りやめている。その時は胃がけいれんしたという説明だった。

かつてチェルシーを率いたサッリ監督(現ラツィオ)も「クリステンセンは、いつも試合当日に胃が痛くなるんだ。理由は分からないが、彼は(試合前になると)いつも神経質になる」という話をしている。今回のFA杯欠場がバルセロナへの移籍には関係なく、単に体調不良だったと信じたい。

ともかくFA杯決勝で敗れた後、トゥヘル監督は「来季トニ(DFリュディガー)とアンドレアスがいなくなる」と明言。レアル・マドリードへの移籍で合意済みと報じられているリュディガーと、クリステンセンの2人がチームから去ることを公の場で認めた。

米大リーグ・ドジャースの共同オーナーである米国人実業家トッド・ボーリー氏らのグループが、ロシア人オーナー・アブラモビッチ氏からチェルシーを買収することも決まった。チェルシーでは今夏、ピッチ内外で多くのことが様変わりする。その前の最後のFA杯は何としても優勝したかったはずだ。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)