レアル・マドリードが土壇場でまたもや底力を発揮し、アウェーでマンチェスター・シティーに逆転勝利を収めた。欧州の舞台であのような逆転劇を見せたのはこれで何度目だろうか。
今季、前人未到の7大会に挑んでいたRマドリードはシーズン開幕後、フランス代表FWエムバペを獲得したことでさらなる飛躍が期待された。しかし、クロースが昨夏引退したこと、その穴を埋めるためベリンガムがポジションを下げたこと、エムバペがうまくフィットしなかったこと、けが人が続出したことなどにより、望むようなパフォーマンスを発揮できなかった。
11月のインターナショナルブレーク以降の試合日程にも苦しめられた。昨年末にインターコンチネンタルカップ1試合のためにカタールへ、1月半ばにスペイン・スーパーカップのためにサウジアラビアへと、中東への長距離移動を2度余儀なくされた。さらに、災害で延期された試合が年始早々に組み込まれたことでクリスマス休暇が短縮され、選手には体を休める暇がなかった。
■1カ月半で14試合の過密日程
今年に入り平日丸々休めた週はまだ1度もない。ここ1カ月半ですでに14試合を戦い、3日おきに1試合の過密日程をこなしている。ほぼ休むことなく、この後、マンチェスターCとの欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメントプレーオフ(PO)第2戦、レアル・ソシエダードとの国王杯準決勝第1戦と、負けられない戦いが続く。
Rマドリードはすべての大会を勝ち抜いた場合、今季の試合数は70を超えることになる。このペースではけが人が絶えないのは当然だ。シーズン開幕からの半年間で負傷していないのは、ルニン、フラン・ガルシア、バルベルデ、モドリッチ、ギュレル、エンドリッキの6人のみ。レギュラークラスの選手はほぼ全員、フィジカル面に何らかの問題を抱えている。中でも10月から11月の早い段階で、守備の要であるカルバハルとミリトンが前十字靱帯(じんたい)断裂で今季絶望となったことは、アンチェロッティ監督にとってもチームにとっても相当な痛手となった。
このような状況ながらも、UEFAスーパーカップとインターコンチネンタルカップを制し、スペインリーグで首位に立っている。欧州CLでPOに回り、リーグ戦やスペイン・スーパーカップ決勝でバルセロナに惨敗したとはいえ、チーム状態を考慮すれば上々の結果と言ってよいだろう。
■PSG時代の姿取り戻したエース
アンチェロッティ監督はそのために試行錯誤を重ねてきた。けが人続出のディフェンスラインには、MFのバルベルデやチュアメニを起用し、Bチームのカスティージャからアセンシオを引き上げることで対処。さらに、昨季あまり信頼を寄せていなかったセバージョスやフラン・ガルシアを貴重な戦力に再生することに成功した。
前線では何よりエムバペがチームにフィットしたことが大きい。序盤はセンターフォワードとしてうまく機能せずに決定機を逃して、チームメートとの連携がうまくいかず、ビニシウスと動きが被ることが度々指摘された。アンチェロッティ監督は時間の経過とともにこの問題を解決していき、昨年末に「エムバペの適応期間は終わった」と宣言。その言葉通り、今年出場した13試合ですでに11ゴールを記録。公式戦通算37試合で25得点を挙げ、パリ・サンジェルマン時代の本来の姿に戻りつつある。
さらにベリンガムも、システム変更によりゴールに近い位置でプレーするようになったことで得点力を取り戻した。けがの影響もあってパフォーマンスを落としていたビニシウスが今年に入り復調し、ロドリゴは日を追うごとに存在感を高め、ブラヒム・ディアスがスーパーサブとしての役割を全うし、攻撃陣がうまく機能し始めている。
■マンCホームで6年半ぶり敗北
Rマドリードがクラブの方針に則り、冬の移籍市場でDF陣の補強を行わなかったことは懸念材料だった。そんな中、2月11日のマンチェスターCとの大一番でカルバハル、ミリトン、リュディガー、アラバ、ルーカス・バスケスがそろって負傷欠場する最悪の事態に直面した。
アンチェロッティ監督はこの一戦に今できるベストの布陣で臨み、最近事あるごとに口にしてきたチーム全体の守備が際立った。それまであまり守備をしないことが問題視されていたビニシウスとエムバペも加わり、全員が献身的にハイプレスをかけることで相手のミスを誘発。決定機の山を築き、相手に2度リードを許すも底力を見せ、3-2の逆転勝利を成し遂げた。
マンチェスターCがエティハド・スタジアムで行われた欧州CLで敗れるのは、実に6年半、35試合ぶり。さらにこの日の被シュート数(20本)は、グアルディオラ監督指揮下における同大会のホームワースト記録となった。
Rマドリードの今季ここまでの公式戦成績は40試合27勝6分け7敗。ビッグクラブとの対戦に勝てず勝負弱さが指摘されていた中、いくら相手が調子を落としていたとはいえ、敵地でこの勝利を挙げたことは今後に向けて大きな自信につながるだろう。
マンチェスターCをホームに迎えてのプレーオフ第2戦は、2月19日にサンティアゴ・ベルナベウで開催される。欧州CL直近11大会で5回優勝の偉業を成し遂げ、史上最多16回目の優勝を目指すRマドリードにとって、ここはまだ通過点だ。ミリトン、アラバ、ルーカス・バスケスの復帰濃厚というポジティブな要素がある中、アンチェロッティ監督がどのように臨むかに注目が集まる。
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


