【モンテレイ(メキシコ)20日(日本時間21日)=飯岡大暉】FIFAワールドカップ2026(W杯)北中米大会に臨む日本代表は、当地での1次リーグ第2戦でチュニジアと対戦する。初戦のオランダ戦は2-2のドロー。今大会の日本1号を決めたMF中村敬斗(25=スタッド・ランス)は、02年日韓大会の稲本潤一以来となる連発を狙う。小学校1年生の時からトレーナーとして近くで見守ってきた花嶋義広さん(44)が、背番号13にエールを送った。

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あんなに小さかった少年が、W杯でゴールを決めた。花嶋さんは、思いがあふれた。20年近くの付き合いとなる中村の日本1号をテレビ越しに見届け「朝から涙がボロボロ止まらなかったです」とうれし泣きした。

日本時間15日のオランダ戦。左ウィングバックで先発した。0-1の後半12分、左サイドから切り込み、右足を力強く振った。同点ゴール。「本当にすごいシュートでした」と喜んだ。

出会いは小学1年の時。元ブラジル代表のロナウジーニョに憧れていた中村は、リフティングをしすぎて股関節を痛めた。祖母、母が通院していた縁で、千葉・我孫子市にある花嶋さんの施術所を訪れた。

「来たときから小学生離れしていました。『どうしたらロナウジーニョみたいな動きになれますか?』と体の使い方を聞いてきて、全部がサッカーについての質問でした」

当時は股関節と足首が固く、王国の10番のような柔らかい動きは難しかった。ひざを浮かせずに開脚し、足裏を床にくっつける体操を教えた。寝る前に1時間程度のストレッチを継続した。

「彼は努力家。ここまで早く股関節が柔らかくなるとは…と思いました。性格は、とにかく素直。とりあえずやってごらんと言うと、まずは全部やってみてくれました」

中学、高校と進学しても、関係は続いた。J1のG大阪でプロ入りし、オランダ、ベルギー、オーストリアと渡り歩いた。現在はフランスのSランスに在籍。欧州にいても、関係はずっと続いた。

「体を痛めているときは、テレビ電話をしながら『そこのツボを押して』とやり取りをしています。多いときだと、1週間丸々やることもあります」

さらに、年に2回ほど、欧州に足を運ぶ。2週間、中村の家に泊まり、寝食をともにする。朝は「行ってらっしゃい」と送り出し、帰ってきたら「おかえり」と迎え入れる。そこから施術が始まる。

身体と向き合うだけでなく、“メンタルトレーナー”としての役目も担う。昨夏は移籍を逃し、泣きながら電話してきたこともあった。今季も得点が決まらず、苦しんだ時期もあった。

「なかなかゴールが決まらなくて、普段の生活が悪いんじゃないかとか、いろいろなところに原因を求めてしまっていました。チーム状況も厳しかったので『歯車が合っていないだけ。やっていればかみ合って、2ケタゴールは絶対に取れるから』と話をしました」

結果的にはシーズン14ゴール。最終戦では4ゴールを決めた。それを陰から支えた。

電話は、日本時間の午前5時半頃から始まる。花嶋さんは早起きをして、中村と向き合う。現地時間で午後10時半。中村のスケジュールを最優先にする。

「敬斗は電話が終わったら寝るだけです(笑い)。メンタルがちょっと落ちた時は、話がしたいと電話が来ます。でも、乗っている時は放っておかれます。連絡がない時が、敬斗にとって一番いい時期なんです」

2人が大事にしている合言葉がある。「今日も自己ベスト」。中学時代から、言い続けてきた。

「敬斗はいつも100点満点を目指そうとするところがありました。どんなことをやっても70点しかできない時もある。その中でも100%を出そうよと。体調が悪いときでも、自己ベストは出せる。気合が入らない時があると敬斗が言っていたので、そういうところから言い始めたと思います」

自己ベストを積み重ね、日本代表でも活躍の場をつかみ取った。ただ、“大活躍”を目の前では見られていない。

「実は、敬斗のゴールをほとんど見たことがないんです。海外に行っても、毎回そう。2週間で2試合観戦することが多いのですが、ゴールが決まらない。でも僕が帰ってから最初の試合で絶対にゴールを決めます」

昨年10月も、観戦した2試合はゴールなし。帰国日はアウェーゲームのため、現地観戦はできなかった。花嶋さんが空港で帰国の便を待っていると、中村がゴールを決めたという一報が届いた。今年4月も、帰国した直後に得点した。

「本当に不思議なジンクス。本当はゴールを見たいですけど。敬斗も知っていて『今回もジンクス通りじゃん』と言われました」

見に行きたい気持ちを抑えつつ、W杯はそっと国内から見守る。強敵オランダを相手にゴール。“ジンクス通り”なのか、しっかり得点を決めてくれた。

「彼が夢見てきた舞台、そのためにずっと努力してきた舞台に立っている。優勝を目指して頑張ってほしいし、後悔なく、人一倍輝いてほしい。日本中を元気づけてほしいです」

陰から、そっとエールを送っている。