オッギーのOh!Olympic
荻島弘一編集委員が日々の話題、トピックスを取り上げる社会派コラム。これまでの取 材経験を絡め、批評や感じたことを鋭く切り込む。

◆荻島弘一(おぎしま・ひろかず)1960年(昭35)9月22日、東京都生まれ。84年に入社し、整理部を経てスポーツ部。五輪、サッカー などを取材し、96年からデスクとなる。出版社編集長を経て、05年に編集委員として現場の取材に戻る。
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「世界最高のサーカス」の楽しみ方

 東京の空に雪がちらつきだしたころ、ソチで開会式が始まった。世界的バイオリニストがいたり、熟年夫婦がいたり、両親や祖父母の故郷から出場する選手がいたり、入場行進も夏季大会にはない雰囲気。これから始まる17日間の祭典が楽しみになる式だった。

 もっとも「たかが冬季五輪だから」と、つい思ってしまう。夏季に比べて規模が違う。過去最多の参加国・地域とはいえ、ロンドン夏季五輪の204の半分にも満たない87。メダルを狙う「冬の大国」は決して多くなく「参加が目標」の国も目立つ。参加選手数は2890人で、ロンドン五輪(1万931人)の4分の1程度。12種目も増やしたとはいえ、総種目数98もロンドン(302)の3分の1以下だ。

 東京で生まれ育った人間にとって「雪と氷の祭典」は、非日常の感覚だ。今大会の日本代表113選手のうち、実に49人は北海道出身。長野県出身の13人を加えると、楽に過半数を占める。環境が整った一部の国と地域の選手だけが争うのが冬季五輪ということだ。

 陸上や水泳、サッカーなどは誰もが経験したことがあるはず。夏季五輪は「世界の中で1番」を決める大会だと感じる。しかし、冬季は違う。日常的にスキーやスケートをする日本人は多くない。ジャンプの経験者など数えるほど。「できない」と思うのが普通だ。陸上短距離のボルト(ジャマイカ)に比べて、そのすごさが分かりにくい。

 ただ、我々にできないことをやるのも「すごさ」には違いない。誤解を恐れず言うなら「サーカス」のすごさだ。なじみの薄い競技を見るのも楽しい。初めて目にするスノーボードのスロープスタイルだったが、そのスリリングな派手さに思わず見入ってしまった。

 非日常の競技だからこそ楽しめる部分はある。夏と違う「楽しみ方」もありそうだ。夏季大会と変わらぬ姿勢でメダルを目指す選手たちを応援しながら「世界最高のサーカス」を楽しめばいい。「冬季大会は見て楽しむ五輪」でもある。

 午前4時、開会式が終わると、テレビ画面は大雪のニュースに変わった。窓の外には非日常の世界が広がっていた。東京では日常生活さえ脅かす雪。遠くソチでは、その雪の上で熱戦が繰り広げられる。「たかが…」とはいえ「されど…」でもある。17日間、4年に1回の「冬の祭り」を存分に見つくしたい。




日本のメダル数

金メダル
1
銀メダル
4
銅メダル
3

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