オッギーのOh!Olympic
荻島弘一編集委員が日々の話題、トピックスを取り上げる社会派コラム。これまでの取 材経験を絡め、批評や感じたことを鋭く切り込む。

◆荻島弘一(おぎしま・ひろかず)1960年(昭35)9月22日、東京都生まれ。84年に入社し、整理部を経てスポーツ部。五輪、サッカー などを取材し、96年からデスクとなる。出版社編集長を経て、05年に編集委員として現場の取材に戻る。
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上村がカーニーに負けた理由

 モーグル女子の上村愛子が、またメダルを逃した。18歳で初出場した98年長野五輪で7位、以後大会ごとに6位、5位、4位と順位を上げて5大会目を迎えていた。06年トリノ大会では「そろそろ(メダルを)もらえると思っていたのに」と目を腫らし、10年バンクーバー大会では「なんで一段一段なんだろう」と涙した。しかし、今度はその一段が上がれなかった。

 女王カーニーが滑り終えた時、上村は銅メダルだと思った。滑りがきれいだったし、スピードも速かったからだ。ところが、表彰台に滑り込んだのはカーニーだった。上村の20・66点に対して、カーニーは21・49点。その差は0・83点。メダルへの最後の「一段」は意外なほど大きかった。

 モーグルは採点競技で、ターン、エア、スピードで争われる。最も重視されるのはターン点で合計30点満点のうち50%の15点。エアとスピードは各25%で7・5点が満点になる。派手なエアに目が行きがちだが、最も大切なのはターン。こぶを巧みに滑る技術を争うのが、この競技なのだ。

 上村とカーニーの得点を比べてみた。スピードは30秒46で5・86点の上村が、31秒04で5・63点のカーニーを上回っていた。ところが、エアはカーニーが4・76点で4・20の上村を引き離している。そして、最も重要なターン。10・6点の上村に対して、カーニーは11・1点。審判5人のうち米国は3・9と3・5と大差、残る4人(フランス、ロシア、オーストリア、チェコ)も、いずれもカーニーを上としている。上村はターンで劣っていたのだ。

 上村のターンは、世界でもトップレベルと言われている。スキーのエッジで確実に雪面をとらえ、こぶをクリアしていく。「カービング」の技術だ。しかし、10年バンクーバー五輪前に採点基準が見直され、スキーを横に滑らせることへの減点が緩和された。

 雪面を受ける力をすべて受け止める上村に対して、カーニーやデュフールラポワントはスキーのテールを小さくずらしながら、雪面に逆らわずに滑った。以前なら減点となった滑りが、高得点を生んだのだ。

 上村は試合後「点も見ずに泣いていた」と言った。「いい滑りができた」と。自分ではどうしようもないルールや採点基準の変更。その中で、5度の五輪に挑戦してきた。「点数は点数で」という言葉に感じたのは「点数よりも自分の最高の滑りを」という強い気持ちだった。得点がどうであれ、この日1番「こぶをうまく滑った」のが上村だったことは間違いない。




日本のメダル数

金メダル
1
銀メダル
4
銅メダル
3

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