スノーボードにとっては「たかが五輪」
待望の日本選手メダル第1号は、スノーボード男子ハーフパイプ(HP)だった。12日の一夜明け会見、銅メダルの平岡卓と壇上に並ぶ銀メダルの平野歩夢を見て「子どもだな」と思った。まだ15歳、時折見せるシャイな表情が中学生らしくてほほ笑ましかった。
日本の冬季五輪史上最年少のメダリスト。スキー、スノーボードの雪上競技に限れば、世界でも最年少記録だ。それまでが60年スコーバレー大会スキー女子滑降銅のヘッヒャー(オーストリア)で、16歳145日。何と54年ぶりに記録を塗り替える快挙だった。
五輪3連覇を狙ったホワイト(米国)は27歳、優勝したポドラドチコフ(スイス)が25歳。2人に比べて平野と平岡が目立つが、実はこの種目は若い選手が多い。決勝進出した12人のうち最年長がホワイトで、次ぐのがポドラドチコフ。17歳で5位のハブリュツェル(スイス)のように10代が12人中5人もいる。
日本代表も若手ばかりだった。2回目の五輪に出場した青野令は、日体大の壮行会で「ベテランらしい経験を生かした試合を」と話した。まだ、23歳なのに。もう1人の代表、子出藤歩夢も19歳。今大会男子HP代表4人は全員平成生まれだった。過去5大会代表延べ19人の平均年齢は20・2歳。五輪代表でも、極端な「若手チーム」になる。
競技自体が若い。本格的な国際大会は80年代後半から。五輪も98年からで、日本で人気のジャンプやフィギュアに比べると歴史は浅い。だからなのか、伝統的な冬季競技の選手とは、五輪に対する考え方に温度差を感じる。「最高の大会は五輪じゃない」というボーダーもいる。五輪軽視とは言わないが、取り巻く環境を含めて他の競技と違う空気を感じるのも確かだ。
選手を含めてスノーボード界に、いい意味で「たかが五輪」という思いがあるのかもしれない。平野や平岡がプレッシャーに負けずに最高の演技をしたのも、前回大会で国母が服装問題で物議をかもしたのも、根っこの部分では同じ。五輪は特別ではない。「いつも通りの自分で、いつも通りにやるだけ」。それが、メダルにつながった。恐れを知らない若い競技に若い選手、それがスノーボードの強みなのかもしれない。
ジャンプの高梨沙羅は4位に終わった。たぶん敗因の中には、五輪のプレッシャーもあったのだろう。我々マスコミも含めて伝統競技を取り巻く環境からくるプレッシャーが。同時間帯に行われていたスノーボードを見た直後、高梨が涙をこらえて答えるインタビューに胸が締め付けられた。
日刊スポーツ新聞社
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