オッギーのOh!Olympic
荻島弘一編集委員が日々の話題、トピックスを取り上げる社会派コラム。これまでの取 材経験を絡め、批評や感じたことを鋭く切り込む。

◆荻島弘一(おぎしま・ひろかず)1960年(昭35)9月22日、東京都生まれ。84年に入社し、整理部を経てスポーツ部。五輪、サッカー などを取材し、96年からデスクとなる。出版社編集長を経て、05年に編集委員として現場の取材に戻る。
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日本よ、オランダの「強さ」に学べ

 オランダが強すぎる。スピードスケート男子1万メートルでも表彰台独占。これで男子500、5000、女子1500メートルに続く4回目の「完全制覇」となった。18日までの9種目で6個の金メダル。銀、銅を合わせると27個のうち19個を獲得している。男子1万メートルでは、戦意喪失した他国に棄権者が続出。あまりに強烈なオランダの「1人勝ち」が思わぬ波紋を広げている。

 かつて、スピードスケートと言えばノルウェーだった。72年札幌大会でアルト・シェンクが3冠(1500、5000、1万)を達成して以来、オランダ時代が来た。長距離を中心に積み重ねたスピードスケートのメダルは前回大会までで82個。この日で101個と3ケタに突入した。

 これまでも長距離は強かったが、今回は短距離でも他国を圧倒した。当然ながら「どうして強いの?」という疑問が沸く。現地のスケート会場はもちろん、日本でも話題になる。「オランダ製のリンクだから、オランダ人向けに氷が作られている」や「スケート靴に秘密がある」に始まり「集団ドーピングでは?」という笑えない話まで出る始末だ。それほどオランダの強さは際立っている。

 国民は子どもの頃からスケート靴を持ち、冬季は氷った運河を滑って移動するという「スケート大国」。ソチの低地はオランダと似た環境で、ゆるい氷も合っている。しかし、それだけでは急に勝てない。組織的な強化による技術の習得。それが、長距離だけでなく短距離種目も世界のトップに立てた理由だろう。

 今回のオランダ選手の滑りを見て、多くの関係者が驚いた。これまでも大柄な身体を生かしたダイナミックな滑りだったが、パワーを制御する技術が足りなかった。だから、スピードの出る短距離では勝てなかった。しかし、今回は姿勢も低く、コーナーワークもうまい。技術の進歩が、多くのメダルを生んでいた。

 徹底して日本など他国の滑りを研究したという。ビデオを分析し、選手にフィードバックした。世界一美しい言われた長島圭一郎のフォームや、世界一の技術と言われた加藤条治のコーナーワークも、オランダ選手の「教科書」になったのだろう。世界で勝つために「国技」のプライドを捨てて、他国に学ぶ。その姿勢が、強さの源だと思う。

 日本がかつて五輪のメダルを大量に獲得してきた柔道(1階級1人だから表彰台独占はないが)は、ロンドン五輪で金メダル1個に終わった。「国技」のプライドが邪魔をして、世界の流れに乗れなかった。すでに「国技」の優位性はないのだから、積極的に海外に学ばないと、さらにメダルから遠ざかってしまう。

 表彰台独占と言えば、72年札幌大会スキージャンプ70メートル級を思い出す。同年の夏季ミュンヘン大会では、体操が個人総合、鉄棒、平行棒で独占。68年大会体操種目別の床と32年競泳男子200メートル背泳ぎを合わせ、3人の日本人が表彰台に並んだのは夏冬合わせて6回だけだ。オランダは、今大会13日目までで4回。強さをうらやむだけでなく、学ぶことはたくさんある。




日本のメダル数

金メダル
1
銀メダル
4
銅メダル
3

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