二刀流どころか、11刀流!? 昨夏世界選手権代表の中村明彦(25=スズキ浜松AC)が、男子10種競技で初のリオデジャネイロ五輪代表に内定した。五輪参加標準記録8100点を上回る日本歴代2位の8180点で初優勝して内定条件を満たした。次は12年ロンドン五輪に出場している専門外の400メートル障害で日本選手権(24~26日、愛知・瑞穂)にエントリー。10種競技+400メートル障害の“11種目”でリオを狙う。

 ばったりと倒れ込んだ。最終種目の1500メートル。飛ばしに飛ばして4分16秒30。参加標準8100点まで10秒以上も余裕があったが「8200点を狙った。安全策の4分20秒では次につながらない」。リスク覚悟で果敢に攻めた。自己記録と優勝で内定を決め「大事な舞台で結果を出せて成長したと思う」と笑った。

 攻めの姿勢はリオ切符を手にしても続く。日本陸連の本田混成部長は、中村が日本選手権400メートル障害に出て、五輪を狙うプランを明かした。400障害は10種競技にはなく“11種目”で五輪出場を狙いにいく。

 12年ロンドン大会は本職で出場を逃したが「五輪を1度、経験するため」に専門外の400障害にトライ。日本選手権2位に入って五輪に初出場した。最高のパフォーマンスが出せれば、今回も可能性はある。

 10種競技の王者は「キング・オブ・アスリート」と呼ばれるが、日本では認知度は高くない。中村は「子どもは『100メートルで10秒01』が格好いいなと思う」と前日11日の桐生祥秀を例に苦笑い。その上で「教える側の大人に、10種競技をすれば、将来的な伸びしろが期待できると思ってもらいたい」。五輪での11刀流は最高のアピールになる。

 日本で10種競技+他種目での五輪出場は2人。1924年パリ大会の納戸徳重(10種競技、400メートル、800メートル)1928年アムステルダム大会の中沢米太郎(10種競技と棒高跳び)。400メートルと棒高跳びは10種競技にあるため、納戸の“11刀流”が日本最高。中村には92年前の先人に並ぶチャンスがある。【益田一弘】

 ◆中村明彦(なかむら・あきひこ)1990年(平2)10月23日、愛知県生まれ。中学から陸上を始める。愛知・岡崎城西高2年で混成競技をスタート。中京大を経てスズキ浜松AC。12年ロンドン五輪は400メートル障害で出場。14年仁川アジア大会で銅メダル。昨年は世界選手権に初出場して16位。179センチ、73キロ。

 ◆男子10種競技の選考要項 中村は、参加標準記録8100点を突破して、日本選手権に優勝したことで代表に内定した。右代は、5月のGPシリーズ日本選抜和歌山大会で8160点を出して優勝。マラソン、競歩以外の一般種目の日本選手権翌日にあたる27日に行われる理事会で選考される。同種目の参加標準突破者は中村と右代だけ。