【ロンドン3日=上田悠太】陸上の世界選手権が今日4日(日本時間5日未明)に開幕する。男子100メートル予選は、サニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)らが出場。サニブラウンを指導する米国人のレイナ・レイダー・コーチ(47)は2日、18歳としての能力に太鼓判を押し、日本勢初となる決勝進出も見据えた。

 サニブラウンはいつも通り、リラックスした表情でロンドン競技場に入った。約1時間、入念にストレッチし、体は少し動かしただけ。大舞台でも「明日(4日)、スイッチが入ればいいかな」と無駄な緊張はなかった。

 多くのメダリストを育てたレイダー氏も「体調がいい。決勝を狙わせたい」と男子100メートルでは日本勢が到達していない舞台を見据える。9秒台も期待されるが、今回は勝負重視。2度目の世界選手権の青年を「自分の走りに集中しろ」とレースに送り出す。オランダを拠点として冬から基礎固めを徹底し、才能が本格化の兆しを見せる。「すぐに吸収し、素直に聞く力がある。今まで指導してきた18歳の中では一番いい。練習へ向かう姿勢もいい。試合では試合のモードで戦える」と指摘した。

 6月11日。オランダで200メートルのレースに出場したサニブラウンは21秒10に沈んだ。日本選手権まであとわずか2週間。落胆は大きかった。そんな中、米国代表としてリオ五輪女子400メートルリレー連覇達成し、女子走り幅跳びも制したティアナ・バートレッタに練習パートナーを変更した。「彼女は精神面が強い、400メートルリレーで1走とスタートがうまい」と理由を説明。これが復活の契機となった。課題のスタートは、間近にある最高の教科書を見て細かく修正。徹底的に意識してきた「最初の3歩」もスムーズになった。何よりメンタルの強さを取り戻せたのが大きかった。日本選手権の100メートル10秒05と200メートル20秒32は、いずれも自己記録。今、最も勢いがある18歳が、新たな歴史の扉を開く。