青学大が05年駒大以来、13年ぶりの総合4連覇を視野に入れた。5時間29分5秒で、往路優勝した東洋大に36秒差の2位につけた。4区までは東洋大に2分3秒差。これ以上のリードを許せば総合優勝も絶望的だったが、山登りの5区で竹石尚人(2年)が、2度立ち止まりながらも逆転圏内にタイム差を短縮した。原晋監督(50)は山下り6区での逆転を明言。4連覇達成に自信を示した。

 総合4連覇への執念だ。山登りの5区の16キロ付近。東洋大との差を2分3秒から40秒余りまで縮めた、青学大・竹石の足が止まる。故障か。周囲が騒然とする中、本人は右足を一瞬伸ばすしぐさをしただけで、平然と走りだした。残り1・3キロの19・5キロ地点でも、再び立ち止まったが、屈伸して、即ラストスパート。東洋大に36秒差の2位でゴールした。

 1区鈴木(2年)は好位置の5位発進。2区の森田(3年)が区間賞でチームを2位に引き上げる。その後は2位キープも4区梶谷が区間9位とやや遅れ、東洋大との差は2分3秒に開く。これ以上タイム差が開くと、総合4連覇は遠のく。危機的状況の中、5区の竹石はたすきを受けた。

 「気持ちが先走った」。竹石は最初の3キロを設定タイムより速く入る。9キロすぎの宮ノ下では、1分近くにタイム差を短縮したものの、両足の太もも裏とふくらはぎに、けいれんが起き始めた。不安はあったが、我慢の限界に達しても焦らない。「中途半端に走るより、しっかり(患部を)伸ばそう」。練習でも経験積みだったため、立ち止まった2カ所で冷静に対処した。

 高校時代は無名。入学直後の一昨年春には左大腿(だいたい)骨を疲労骨折した。ケガをかばって、他の箇所も痛める悪循環。一昨年は走れない日々を送ったが「憧れの箱根を走りたい」と耐え続けた。昨夏の合宿。「高地のクロスカントリーコースを涼しい顔で走る。心肺機能が強い」と原監督から山登り候補に抜てきされた。挫折を乗り越えた経験があるからこそ、緊急事態にも動じなかった。

 36秒差の2位。復路6区の山下りには3年連続出場のスペシャリスト小野田(3年)が控える。8区はメンバー変更でエース下田(4年)を投入予定。原監督は「6区で逆転し、逆に30秒差をつけたい。そして(8区の)下田で勝負をつける。9、10区は3連覇時のようにピクニックラン。そうなるようにしたい」と総合4連覇への戦略を披露した。今季無冠の反省から打ち立てた、個の力をまとめて調和させる「ハーモニー大作戦」。成功は目前だ。【田口潤】