たえず笑顔だった門出の場。その中でも社会人の自覚がにじんでいた。日本人初の100メートル9秒台をマークした陸上男子の桐生祥秀(22)が23日、東洋大の卒業式に出席した。

 4年間の大学生活を「楽しい4年間でした。メダル取ったり、9秒台が出たり、逆に負けたりもした。一番の思い出は選べないけど、1年1年いろんなことがあった」と振り返った。

 拠点は今後も東洋大となるが、4月から日本生命に所属し、活動する。「学生はもう終わり。社会人になる。9秒台を出して注目される中、恥じない結果を出したい」と話した。

 実質的にプロとなる。大学生とは違い、給料、報酬をもらい、走る意味を、こう考える。

 「野球選手、サッカー選手は憧れられる。(理由として)いい車に乗ったり、いい時計を買ったりとか、そういうのもあると思う。陸上選手でも、そんな憧れられる活躍をできるようにしたい」。

 もちろん、単純にお金が欲しいわけでも、派手な生活をしたいわけでもない。考えの根底には、陸上のイメージを少しでも華やかにできればとの思いがある。陸上部のない日本生命を所属先に選んだのも、なじみのない人に少しでも競技を知ってもらうためだ。

 「ここから先、もう9秒台を出さないと会場が沸くことはないと思う」。1度破った10秒の壁。もう、そこに壁はないと証明するシーズンにする。