全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)が24日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間(42・195キロ)で行われる。7回の最多優勝を誇る三井住友海上は昨年、プリンセス駅伝を途中棄権して連続出場が24回で途切れた。今季はエースの岡本春美(21)が日本代表を狙うまでに成長。再び優勝を目指すチームになってきた。

三井住友海上の7回の優勝はすべて、渋井陽子(40=現プレーイングアドバイザー)が3区を走っていた。渋井は08年北京五輪の女子1万メートル代表で、02年に記録した1万メートルの30分48秒89は現在でも日本記録。さらにマラソンでも前日本記録保持者だ。三井住友海上は渋井を軸に2000年から09年までの10年間に7回の優勝を積み上げた。

渋井の後継者として期待されているのが岡本だ。昨年12月に5000メートルで15分20秒56、1万メートルで31分28秒20と2週連続で世界陸上ドーハの標準記録を突破した。代表への道が目の前にあった。

しかしこの1年間、岡本には苦難の方が多かったといえる。昨年10月のプリンセス駅伝は、レース中に脱水症状を起こし途中棄権して連続出場を途切れさせてしまった。その1カ月後には世界陸上標準記録を突破の走りを連発したが、直後の1月には左足の指を疲労骨折。一時良くなってレース復帰に向かっていたが、今度は足底筋膜炎になり、走る練習の再開は8月末までずれ込んでしまった。

10月のプリンセス駅伝は1区を任されて区間8位。岡本本来の力からすると復調とはいえないが、2区の田辺美咲(24)が区間賞、4区のカマウ・タビタ(19)が区間2位の好走を見せて、チームはトップの積水化学と20秒差の3位でクイーンズ駅伝復帰を決めた。

「(昨年のプリンセス駅伝の途中棄権は)自分の気持ちを戻すのに時間がかかりましたが、周りから温かい言葉をもらって勇気づけられました。その後もケガが続いてつらかったですけど、友人や家族、高校の先生が励ましてくれて、そうした積み重ねでまた走ることができました。クイーンズ駅伝は3区で(昨年のプリンセス駅伝3区の)リベンジをしたい」と意気込む。

選手層の厚さでは全盛期の三井住友海上には及ばないが、田辺は1区でも区間上位が期待できる。またタビタは昨年の全国高校駅伝アンカーで4人抜きの韋駄天(いだてん)走りを見せ、神村学園高(鹿児島)初優勝の立役者となった。外国人は距離の1番短い4区(3.6キロ)にしか出られないが、タビタには20~30秒差を逆転する力がある。

今年1月にコーチから昇格した鈴木尚人監督はクイーンズ駅伝の「優勝」を目標に掲げる。「タビタがプリンセス駅伝前は良い状態ではなかったので、彼女が戻ってくればあと30秒くらいは変わってきます。岡本の3区出場はこのあとの練習次第ですね」。自信を持ってエースを3区に起用できたとき、名門復活ののろしが上がる。