平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)では10チームによる団体が行われる。初実施の前回ソチ大会で5位の日本は、初のメダル獲得を狙う。カギを握る種目、アイスダンスのクリス・リード(28)村元哉中(24=ともに木下グループ)組は、結成3季目で五輪初出場。成長を続ける2人の勢いを日本チームに吹き込む。

 手を握った瞬間が始まりだった。15年春、クリスは引退した姉キャシーに代わる新たな相棒を求め、日本連盟を通じトライアウトを実施した。参加した村元は当時、シングル選手から転向して1年足らず。「自分が、ベテランのクリスと組んでやっていいのか」。葛藤を抱えながらの挑戦だった。だが、氷の上で手をつないだ瞬間、その不安は消えた。村元はこう振り返る。「手をとって滑った瞬間、『大丈夫だ』と感じました。100%信頼できる、と」。クリスにも長年組んできた姉とは違う「心地よさ」があった。

 初出場の15年全日本選手権でいきなり初優勝を果たした。経験のあるクリスに、踊ることが大好きな村元が身を委ねる。組んでまだ7カ月でも、楽しさが伝わる演技だった。フリーダンスの演技後、村元の魅力を聞かれたクリスは、彼女の顔を見つめながら「きれい。きれい。本当にきれい」と話し、笑いを誘った。アイスダンスにとって重要な、男女の色っぽいムードも2人は自然と表現できるようになった。

 結成3シーズン目の今季は、ラテンを踊るショートダンスも、坂本龍一の曲に合わせてしっとりと滑るフリーダンスも、どこか自信が漂う。昨年9月のネーベルホルン杯では、自己ベストを超える最高の滑りで2位に入り、五輪出場枠を獲得。これで日本の五輪団体出場も大きく引き寄せた。

 2人には、五輪の舞台で活躍したいと願う理由がある。日本は世界の強豪国の1つだが、他国と違い、男女シングルにその人気は集まる。アイスダンス、ペアのカップル競技は日本では練習場所の確保が難しく、専門の指導者も少ない。

 村元、リード組も現在は米デトロイトを拠点に活動している。そんな状況を変え、アイスダンスをより日本に根付かせるには「成績を残していかないと」と村元は言う。「五輪で私たちができる最高の演技と、結果を残せたらもっと注目度があがるのかなと思います」。フリーダンスで表現するのは、桜。2人の思いを乗せ、五輪のリンクで満開の桜を咲かせる。【高場泉穂】

 ◆クリス・リード 1989年7月7日、米国生まれ。姉キャシーとのペアで10年バンクーバー五輪17位、14年ソチ五輪21位。17年国別対抗戦優勝。現ペアの自己ベストはSD63・77点、FD96・63点、合計159・30点。185センチ。

 ◆村元哉中(むらもと・かな)1993年(平5)3月3日、兵庫県明石市生まれ。5歳からスケートを始める。14-15年にシングルからアイスダンスに転向。162センチ。