「本当に情けない」。パリ五輪(オリンピック)柔道混合団体決勝後のインタビューで斉藤立は涙を流して言った。
日本は前回に続き宿敵フランスに敗戦。22歳の斉藤は、本戦と3-3からの代表戦で、男子90キロ超級を制したリネールに連続一本負け。銀メダルは彼にとって輝きを消失 した、ふがいない自分の映し鏡なのだろう。
卓球女子シングルス3位決定戦で、韓国選手を破って銅メダルを獲得した早田ひなは「この状況で取った銅メダルは金メダルより価値がある」と、あふれる涙をぬぐった。
準々決勝で痛めた利き腕の左腕は、ドライヤーも握れなかったという。痛み止めの注射を打ち、気力で戦い抜いてつかんだメダルは、人生の輝ける勲章でもあったのだ。
競泳女子で21年東京五輪2冠の大橋悠依は、200メートル個人メドレーでまさかの準決勝敗退後、すがすがしい笑顔を見せた。
「心から楽しめた。東京から3年間、苦しいことの方が多かったけど、ここにたどりつくことができた自分の道を誇りに思う」。その充実した表情は、敗者のものではなかった。
猛暑の深夜、私たちは連日寝たい目をこすりつつ、メダルの数や色に一喜一憂している。メダルは多い方がいいし、色だって輝くほうがいい。
でも本当のメダルの色や価値は選手本人が決めることなのかもしれない。それぞれに重みと輝きが違うのだ。そして、五輪にはメダルがなくても幸福感を味わえることもある。選手たちの言葉を聞いて、そんなことを考えた。
そういえば04年アテネ五輪で陸上男子ハンマー投げに出場した室伏広治も、1位の選手のドーピング違反で金メダルに繰り上がった後に、こんな話をしていた。
「金メダルは素直にうれしい。でも自分は大観衆が他種目の地元選手を声援する中で、6投目に集中して自分の投てきができたことが一番うれしい。銀ならそれでもよかった。五輪はメダルだけで終わるような大会じゃない」。
選手側から見た五輪には、まったく違った風景があるのだ。メダルや記録、そして勝負までも超越した異次元の世界。常人に実感はできないが、何となく理解はできる。
五輪を戦い終えた選手の言葉を聞いて、日本のメダルの数や色に一喜一憂することにちょっぴり嫌気がさしてきた。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「五輪百景」)




