日本には会員制コース以外にもプレーができないゴルフ場がある。米軍基地の中にあるミリタリーコースだ。その1つが東京都多摩市にある多摩ヒルズゴルフコースである。アメリカで知り合った米国人コーチがそこでジュニアを教えているというので話を聞きに行った。
●パスポート提示してコースの中へ
- ジェームス・ショー氏
以前アメリカでバイオメカニクス(生体力学)関連のセミナーを受けた際に知り合った、ジェームス・ショーというコーチから久しぶりに連絡がきた。
「多摩ヒルズGCのディレクターになったから遊びに来ないか」
米軍関係者が利用するゴルフ場で、日本の地図には名前が載っていない。施設の入り口には検問がありパスポートの提示が求められる。看板にも「ここからはアメリカの土地」という注意書きが書かれていた。米軍関係者や米軍関係者の紹介がなければ入ることのできない場所だ。
- 施設の入り口
多摩丘陵に作られたコースは適度にアップダウンがある。傾斜にドッグレッグなどが随所に絡んで、決して簡単なコースではないという印象だ。レギュラーティーから200ヤード弱のパー3もあった。
ショーはここで米軍関係者やジュニアを中心にレッスンを行っている。地元の小中学生が受けられるようになっており、訪問した日にもアメリカ人の子どもより多くの日本人がいた。
●充実した練習環境
練習場には室内から打てるレッスンレンジがありどことなくアメリカンな雰囲気が漂っていた。ほかにも室内の練習場もありレッスン環境としてはかなり充実している印象。
アメリカではポピュラーになってきていて、近年日本のPGAなどでも行っているジュニアリーグというジュニア育成の競技を推進しているそうだ。印象的だったのは練習場の看板の数。日本では50ヤードくらいのピッチで数個が置かれているのがスタンダードだが、多摩ヒルズの練習場はかなり細かくヤーデージの看板が設置されていた。これだけでも距離感を身につけるのにはもってこいの環境だといえる。
- 細かくヤーデージの看板が設置されている
練習レンジのほかにもアプローチエリアもある。ここに個人の特性に合ったレッスンができるショーのようなコーチがいれば、ジュニアにとってかなりハイレベルなレッスンができるはずだ。
ショーは2016年にPGAティーチャーオブザイヤーを受賞したマイク・アダムスのティーチングに大きな影響を受けた。体の成長が早いジュニアはその時々に最適なスイングを作っていくことが重要だが、バイオメカニクスを基にした「プレーヤーに最適なスイング」の作り方を学んだショーはジュニアゴルファーを適切に導くことができるだろう。
ハードとソフトの両面が整った多摩ヒルズの練習環境。近いうちにミリタリーコース育ちの逆輸入選手がジュニアで活躍する日が訪れるかもしれない。
- 練習するジュニア
◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。欧米のゴルフ先進国にて米PGAツアー選手を指導する80人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を直接学び研究活動を行っている。書籍「ロジカル・パッティング」(実業之日本社)では欧米パッティングコーチの最新メソッドを紹介している。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/
(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)