今週、米シニア・PGAツアーチャンピオンズの2021年初戦、三菱電機選手権(フアラライGC・ハワイ州)が21~23日に行われる。新型コロナの影響もあり、PGAツアーチャンピオンズは2020年と2021年を1つのシーズンとして統合することとなり、シーズン後半戦のスタートとなる。CS放送のゴルフ専門チャンネルで、PGAツアーチャンピオンズの解説をするようになり、私もずいぶんシニアの試合について詳しくなった。熱狂的なシニアツアーのファンという人はあまり多くないかもしれないが、個性的な選手が多いし、アマチュアに参考になるプレーが多いので、ハワイ島のきれいな景色とともに今週の米シニアツアーを楽しんでみてはいかがだろうか。


■最年長Vと最多勝の可能性


PGAツアーチャンピオンズの出場選手は当然全員50歳以上だが、プレーは若々しく、必ずしも若い選手が勝つとは限らない。そんな彼らを見ていると、他の競技に比べてゴルフというスポーツが、年齢に影響を受ける度合いが少ないということを改めて感じさせられる。

米シニアツアーを代表する選手といえば、なんといっても63歳の今も第一線で活躍するベルンハルト・ランガーだ。2020年の優勝は1回だけだったが、15試合中12試合でベストテン入りという高次元のパフォーマンスを発揮し、賞金ランク1位となっている。米シニアツアーでの優勝回数は41回、年間王者に5度輝くというレジェンドは、今年2つの記録を達成する可能性がある。

1つめは最年長優勝記録だ。現在の記録保持者は63歳の誕生日に優勝したマイク・フェチックだが、今年8月に64歳になるランガーが優勝すれば、その時点で記録更新となる。もう1つはヘール・アーウィンが持つ45勝の最多勝記録。アーニー・エルスやフィル・ミケルソン、ジム・フューリックら強豪が次々とシニア参戦する中、さすがのランガーも優勝するのが難しくなってきているが、毎試合のように上位に顔を出しているので十分チャンスはある。今年4勝を挙げることは不可能なことではない。

ランガーは昨年のマスターズで63歳2カ月18日の史上最年長予選通過記録を樹立。最終日はブライソン・デシャンボーと同組だったが、デシャンボーの飛距離に対して熟練の技で対抗し、デシャンボーより2打少ない71で回った。このようにベテランが技を駆使してコースを攻略する姿は、アマチュアにとって大いに励みになったのではないか。


■今年参戦する「ルーキー」の活躍は


昨年はアーニー・エルス、ジム・フューリック、フィル・ミケルソンらのPGAツアーでも活躍する「ゴールデン・ルーキー」が参戦し、いきなり優勝をさらったが、ブレット・クイグリーやシェーン・バーチなど「無名のルーキー」たちも新天地のシニアツアーで花を咲かせるなど、とにかくルーキーの活躍が目立った。

今年はトーマス・ビヨーンやパドレイグ・ハリントン、スチュアート・アップルビーといったかつての名選手が50歳となり、新たにシニアの出場資格を得る。きっと、オールドファンを喜ばせてくれるような活躍を見せてくれるに違いない。

昨年は「若手」の活躍が目立った1年だったが、今年は「ベテラン」の巻き返しにも期待したい。2019年の年間王者スコット・マッキャロンは昨年不本意なシーズンを送り、賞金ランキング41位と大きく成績を落とした。ショットの正確性が不調の原因だったので、今年はコーチのE・Aティシュラーと調整して挑むだろう。

個性的は風貌で人気のミゲル・アンヘル・ヒメネスは、ルーキー以外で唯一2勝を挙げ、2020年は賞金ランキング4位につけている。体の回転を生かしたフラットなスイングと、独特なパッティンググリップは、ヒメネスらしい個性あふれるプレースタイルだ。昨年勝利している相性の良い三菱電機選手権で勢いをつけたいところだ。

PGAツアーチャンピオンズの試合が行われるコースは、アマチュアがプレーするゴルフ場と設定が大きく変わらず、選手は今まで培ってきた技術や戦略を使って攻略する。きっと、アマチュアにとって参考になる点が多いはずだ。ぜひ、PGAツアーチャンピオンズのシニアたちの熱い戦いにも注目してほしい。

(ニッカンスポーツ・コム/吉田洋一郎の「日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。2019年度ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。欧米のゴルフスイング理論に精通し、トーナメント解説、ゴルフ雑誌連載、書籍・コラム執筆などの活動を行う。欧米のゴルフ先進国にて、米PGAツアー選手を指導する100人以上のゴルフインストラクターから、心技体における最新理論を直接学び研究している。著書は合計12冊。書籍「驚異の反力打法」(ゴルフダイジェスト社)では地面反力の最新メソッドを紹介している。書籍の立ち読み機能をオフィシャルブログにて紹介中→ http://hiroichiro.com/blog/