気になる選手がまた1人増えた。先週のミヤギテレビ杯ダンロップ女子(宮城・利府GC)で、AIG全英女子オープンを制した渋野日向子(20=RSK山陽放送)のキャディーを務めた兵庫・滝川二高1年、16歳の湯浅芹(せり)さんだ。滝川二高のゴルフ部に在籍し、昨年の日本ジュニア12~14歳の部で5位に入った逸材。これまで、キャディーの経験はないが、同じ青木翔コーチに師事しており、キャディーの調整がつかなかったこともあり、8月に同コーチから「やってみれば」と言われ、実現した。

大会中、大ギャラリーを引き連れる先輩の背中を見続けた。湯浅にとっては歩く「教科書」。瞬間、瞬間、すべての経験が、血となり、肉となる。大会終了後、「オンオフの切り替えがすごい。判断するのも早いし、ピンチの時でもどんな状況でも攻めることを忘れない。すごく勉強になりました」と普通の人では味わえない肌で感じたリアルな経験を伝えてくれた。

もちろん、キャディーとしても、渋野が、「私以上に面白い。私は怒るとしゃべらなくなる。芹にはずっとしゃべっていてほしい。笑顔もしゃべりも向こうの方が上なんで」と話した通り、先輩が大事にするピカチュウのクラブカバーを落とさないようしっかり押さえながら常にスマイルでラウンド。ノーバーディーの危機に陥った第1ラウンドでは、最終18番でラインを読み、バーディーを呼び込み、「明日から(ライン読み)よろしく」と先輩から言われる場面もあるなど、しっかり役割を果たしていた。

今、日本のみならず世界が注目する渋野。そのキャディーを務めるとなると相当な重圧がかかる。16歳ならなおさら物おじしても不思議はないが、湯浅さんは「やらせてください」と即答したという。この時期の、「経験」がどれだけ将来に向けて大きなものになるか。過去、他競技を含め、記者として多くのジュニア選手と出会い取材したが、トップ選手になる選手は、必ず「転機」があった。今回の経験は、この転機になり得る貴重な時間だったと思う。

現在、渋野を始め黄金世代と言われる選手の活躍は、以前とは違いアマチュア時代からツアーに何度も参加し、国際大会に出場する機会が増え、早くから「経験」を積んだことで、目指す目標が高く設定されるからだと思う。湯浅さんも、先輩と過ごした3日間の経験で、視野が広がり、視線はもっと上へとなったはず。全英女王と同じ舞台に立ち、ラウンドする姿がいつかくる-。そう、思いをはせて、その時を心待ちにしたい。【松末守司】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

◆松末守司(まつすえ・しゅうじ)1973年(昭48)7月31日、東京生まれ。06年10月に北海道本社に入社後、スポーツ全般を担当し、夏は競馬担当も。冬季五輪は10年バンクーバー大会、14年ソチ大会、18年平昌大会と3度取材。18年12月からゴルフ担当。