今年の“開幕戦”になったアース・モンダミン・カップのインターネット中継に対する評価が高い。88年ツアー制施行後初の“ノーTVトーナメント”にあって、全日程の視聴回数が延べ677万3987回を記録した。

メイン映像のほかパー3、注目ホール、選手インタビューを加えた4チャンネル(順延開催の月曜日はメインチャンネルのみ)で4日間72ホールをフルカバーする-。スポーツは生が1番だから、ゴルフ好きにはたまらんし、現地取材ができなかった私たちも重宝した。「オンエアは決勝ラウンド終盤4~5ホール、しかもほとんどグリーン上」との印象が強い地上波にイメージ的には完勝と言っていい。

じゃあ、もうテレビ中継は必要ないのか-。テレビは日本プロゴルフを草創期から支えてきた。国内女子ツアーに限れば、今も年間37戦のうち10戦を主催、他の27戦ではアース・モンダミン・カップを除く26戦で後援、協力に名を連ねる。金を出しながら、テレビ中継をして、プロゴルフを世間に広めてきた。

そこにはプロゴルフをよりよいものへ、との情熱もあるだろう。あるテレビマンに話を聞いた。

「今回のネット中継を“大成功”と言われると、つらいです」。地上波で視聴率5~8%と言えば「低い」「悪い」となるが、視聴者数換算は「5%=300万~400万人」が相場らしい。ネット中継の「4日間の視聴回数=延べ677万3987」とどちらが上なのか。「お年寄りだったり、ネット中継に対応できない人が見るのがテレビ」。「ネット中継は、ゴルフ好きにはいい。ただ、ゴルフを知らない人におもしろさを伝え、ファン層を広げていくのがテレビの役目」と存在意義を認識する。

自分たちの弱みもわかっている。「今回の中継を、テレビ関係者のほとんどは歯ぎしりしながら見たでしょう」。ネットのストロングポイントは「4日間完全ライブ」だが、スポンサーCM、放送枠に縛られる地上波では絶対に不可能。「VTRでダイジェスト版を作る手法は、世間に受け入れられなくなるかもしれない」という危機感だ。

それを打開しようという試みは、すでにある。例えば、今回のネット中継はCS放送スカイAの「全部見せますシリーズ」に似た作りだった。つまりテレビ局は完全中継のノウハウを当然ながら持っている。後は放送枠の問題。局によっては、地上波を“入り口のツール”に、CS、BSまたはネット配信の長時間中継に引き込む手法などを模索している。

アース・モンダミン・カップで、インターネット中継が、テレビにとってかわるポテンシャルを持つことは十分わかった。後は刺激を受けたテレビ局が、どう巻き返すか。自負と情熱に期待したい。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)