一目見ただけで「写真を撮らなくては!」という衝動に駆られる、貴重なシーンに遭遇した。6月2日の開幕を控えた女子ゴルフのメジャー、全米女子オープンが行われる、米ノースカロライナ州サザンパインズのパインニードルズGCでの出来事だった。あちらこちらで練習している日本勢を探している途中、視界に飛び込んできたのは、母親と子どもが1本のパターで交代にパッティング練習しているシーン。それだけでも、メジャーが行われる会場では異色。さらによく見ると、母親が伝説の選手だった。

その伝説の選手とは、アニカ・ソレンスタム(51=スウェーデン)。米ツアー通算72勝で、うち10勝がメジャー、歴代最多8度の賞金女王に輝いた“レジェンド中のレジェンド”だ。一緒にいた子どもは、長男のウィリアムくん(11)。息子は母のナイスパットに拍手を送るが、母は息子のパットを全く褒めない。険しい表情も崩さないが、一挙手一投足をくまなく観察する様子は、愛情があふれ出ているように感じた。

伝説の選手が、厳しくも熱心に英才教育を施していた。そんな状況を見ると、ウィリアムくんの将来を期待せずにはいられない。メジャー女王の息子がメジャー王者へ。そんな日が訪れたら、世界中で人気者となる可能性が高い。

もちろん、メジャー王者になることができる人は、ほんの一握りだ。ただ、10度もメジャーを制した選手から、熱心な指導を受け続ければ、メジャー王者となる可能性は高くなるだろう。もしかすると10年以内にも、タイガー・ウッズ(米国)が持つ、21歳でのマスターズ優勝という最年少記録だって塗り替えるかもしれない。そんなことを考えたら、目の前で繰り広げられていた親子のパッティング練習は、非常に貴重なシーンに思えた。

ソレンスタムは昨年の全米シニア女子オープンを制し、今年の全米女子オープンの出場権をつかんだ。すでに08年に、1度は現役引退しているだけに、今回が最後の5大大会出場となる可能性もある。そう考えたら、余計に写真に収めないといけないという使命感すら感じた。

ちょうど、親子のすぐ隣で練習していた西村優菜は「きっと、この子もすごくうまくなるんだろうなって思いながら練習していました」と、胸の内を明かした。選手も“予感”を覚えるほどの存在感。いつか、ウィリアムくんがスーパースターになる日が訪れたら、貴重なお宝写真として、この日の取材が生きるかもしれない。10年後、20年後の楽しみができた気がした。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内の練習場で、長男のウィリアムくん(左)からボールを受け取るアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内の練習場で、長男のウィリアムくん(左)からボールを受け取るアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(左)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(左)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(左)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(左)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(右)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(右)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(左)と練習するアニカ・ソレンスタム
全米女子オープン開幕を3日後に控えた会場内で、長男のウィリアムくん(左)と練習するアニカ・ソレンスタム