日本が誇るショットメーカーが、世界への扉を開いた。小平智(さとし、28=Admiral)が日本勢5人目となる米ツアー優勝を成し遂げた。6打差12位から7バーディー、2ボギーの66で回り、通算12アンダーの272で並んだ金シウ(22=韓国)とのプレーオフ(PO)を制した。出場15試合目での初Vは松山英樹の26戦を上回る日本人最速記録。2年シードを獲得し、熱望していた米参戦がいよいよ現実のものとなる。

 小平の夢を乗せたボールが、カップを気持ちよく鳴らした。PO3ホール目、先に7メートル強を流し込んで渾身(こんしん)のガッツポーズ。レッスンプロだった父健一さん(77)から幼少期にたたき込まれた「喜怒哀楽を出さない」という教えを忠実に守る男も、この時ばかりは感情が爆発した。「まさか優勝すると思っていなかったのでビックリです。今までの優勝で、一番頭が真っ白になってます」と喜びがあふれた。

 決意が揺らぎそうになる時期があった。3月のアーノルド・パーマー招待。通算8オーバーで予選落ちした試合をマキロイ(英国)が通算18アンダーで勝った。珍しく「想定できない数字。心が折れそうになった。『やっぱりダメなのかな』という風に思ってしまうところもある」と、こぼした。長年の付き合いで、キャディーを務めることもある三上マネジャーは「あんなに弱気な智を初めて見た」と驚きを隠せなかった。

 米国で失いかけた自信を米国で取り戻した。直後のデル・マッチプレー。ミケルソン(米国)との対戦で「体にクラブを巻き付けて打つミケルソンを見て、イメージが良くなった」。ショット復調のヒントをつかんだ。初出場のマスターズは28位と健闘。そして、世界ランク1位D・ジョンソン(米国)も名を連ねたフィールドで堂々の大逆転Vを飾った。全てが、この歓喜につながっていた。

 来年のマスターズ出場も早々に決まった。「日本で(松山)英樹の活躍を見ていて、ああいう選手になりたいと思っていた。少しは近づけたのかなと思う。まだまだだと思うけど、これをきっかけにメジャーでも優勝争いをできる選手になりたい」と、対抗心を燃やした。元賞金女王の古閑美保夫人(35)には「マスターズでタイガー・ウッズと優勝争いをする」とも言い続けてきた。快挙すら通過点に変えて突き進んでいく。