首位で出た稲見萌寧(もね=都築電気)が、10代ラスト大会でツアー初優勝を飾った。5バーディー、3ボギーの70で回り、通算9アンダー、207。女子ゴルフ界を席巻する黄金世代とプラチナ世代に挟まれた、谷間の世代からスター候補生が誕生。中学1年から1日も練習を休んだことがないという練習の虫が、29日の20歳の誕生日を自ら前祝いした。

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天に届くかのごとく空に向かって拳を高々と突き上げた。通算8アンダーで先にフィニッシュしていた青木、イ・ナリと並んで迎えた最終18番。グリーン上で頭に浮かんだのは1年前のプロテスト合格の1打だった。最終日、最終ホールで決めなければ合格できない3メートルのバーディーパットを極限状態の中、沈めた。あのしびれる1打に比べたら何でもないと思えた。「大丈夫」と言い聞かせ、同じ3メートルをしっかり決めた。

10代最後の日に自身初のタイトル。全身で喜びを爆発させ「絶対に入れてやるという気持ちを貫いた。自分に最高のプレゼントになった」と笑顔と涙で顔をくしゃくしゃにした。

小4のゴールデンウイーク。父了さん(41)に連れられてゴルフ場に行った。初めて手にするクラブで空振りすることなく球を前に飛ばした。「センスあるかも」(了さん)。そこから父娘でのめり込んだ。中学を卒業するとより良い練習環境を求め、都内から千葉に引っ越した。

朝4時から登校ギリギリまで練習をこなし、下校すると約40分かけて自宅から父と練習場に向かった。1日10時間。風邪をひこうが、冬の寒い日だろうが、10年間、1日も休まず練習をし続けたという。「世界一になるためには、世界一練習しないとだめ」とぶれることなく自身と向き合い続けこの日につなげた。

はい上がってきた。昨年末のツアー出場を懸けた予選会で僅差で最終に進めず、レギュラーツアー出場権を逃した。限られた出場機会の中、10戦中5度のトップ10入りで賞金も今回の優勝を含め3500万円超となり来季のシード権もみえた。「12月にコーチを替えて持ち味のショットが戻った」と話す。大会後、来週の試合会場の山梨に向かい誕生日も朝8時から練習ラウンドを行う予定。もう谷間の世代とは言わせない。目指す頂点へ大きな1歩を踏み出した。【松末守司】

<稲見萌寧の使用クラブ>

▼1W=キャロウェイ エピックフラッシュ(シャフト=USTマミヤ アッタス11、硬さ5X、10・5度、長さ45インチ)▼3W=同 (15度)▼5W=同(18度)▼4、5UT=テーラーメイド グローレ▼アイアン=同 フォージドP770(5I~PW)▼ウエッジ=タイトリスト SM7(52、58度)▼パター=オデッセイ オー・ワークス ツアー ダブルワイド▼ボール=キャロウェイ クロムソフトX

◆稲見萌寧(いなみ・もね)1999年(平11)7月29日、東京・豊島区生まれ。9歳で競技を始めた。12年関東小学生選手権、14年関東中学生選手権、15年東日本パブリックアマ優勝。ツアーは15歳で出場した15年中京テレビ・ブリヂストン10位、16年三洋電機レディース8位。昨年プロテストに高卒で1発合格し、プロ初戦のNEC軽井沢72で11位。現在は日本ウェルネススポーツ大に在学。家族は両親。名前はフランスの画家モネと同じ読み方をするが由来は「クロード・モネではないみたいです。世界に出ても外国の方から覚えてもらえるように付けてもらいました」という。166センチ、58キロ。