逆転賞金女王に挑む全英覇者の渋野日向子(21=RSK山陽放送)が、首位と2打差3位で最終日を迎える。

一時は首位浮上しながら上がりの2連続ボギーで71、通算5アンダーの211とした。自己採点は「50点」。優勝なら、現在12位の鈴木愛(25)が単独2位でない限り初の女王が決まる。この日は宮崎CC開催の大会史上最多8664人の大ギャラリーが殺到した。奇跡の戴冠ムードは高まる一方だ。イ・ボミ(31=韓国)が通算7アンダーで首位。

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とても逆転優勝を狙う顔ではない。ホールアウト時、渋野は超不機嫌だった。「上がり2ホールがダメだったんで、台無しだな~って。50点ぐらいですかね」。最悪の自己採点。減点理由は2連続ボギーフィニッシュ。17、18番パー4で第1打を左に曲げた。きっかけは13番パー5のドライバーショットだ。右からの風に流され、左の松林に打ち込み、ボギーとした。

「1個のミスから左に行くようになった。パー5のボギーは1番やっちゃいけないことなのに。メンタルがかなりやられた。抑えが効かないぐらい、ぶち切れました」とこぼした。

それでも、71で回った。1位イ・ボミ、2位ペ・ソンウと3人だけの3日連続アンダーパーだ。プラス要素は、パットだ。5番ボギーからバウンスバックした6番で4メートルを入れてバーディー奪取。7番は3・5メートル、12番は4メートル。前日まで36ホールで逃し続けた“決めたい距離”を決めた。

「単独2位以上」が前提の賞金女王へ。本人は無関心を決め込むが、周囲はその“資格”を認める。

15、16年賞金女王イ・ボミが「うらやましい」と言った。渋野と同組で回り、69で首位に立ったが「ドライバーとか、すごくいい。ショットを悩まずに打ってます。(自分を)信じて打ってます。ミスとか絶対に考えていない」。ショットの悩みからスランプに陥った元絶対女王には、21歳の思い切りがまぶしい。

場内も“渋野戴冠”でヒートアップしている。ギャラリー数は前日5511人、この日はさらに増えて8664人。宮崎CC開催となった03年以降の各日動員記録を2日連続で更新した。ロープ際は人の“壁”ができた。ホール間も人垣の花道となり、渋野も移動の途中でちびっ子とハイタッチを楽しみ、いらだつ気持ちをリフレッシュした。

賞金女王は意識しないが、優勝は別だ。「最後まで諦めない。(支えてくれる人に)優勝が1番の恩返しですから」と言い、逆転V確率を「60%ですかね」と口にした。全英と国内4勝中、7月資生堂アネッサレディース以降3勝が最終日の逆転勝ちだ。2打差逆転Vなら、賞金ランク1位鈴木が単独2位にならない限り、賞金女王を手にする。「今日は地鶏を食べます」。宮崎名物で力を蓄え、今季ツアー最後の1日に臨む。【加藤裕一】

◆逆転女王の条件 渋野は賞金ランク3位で、1位鈴木と約1511万円差、2位申ジエと約12万円差。自力戴冠はないが、、以下のパターンで逆転可能となる。<1>「単独2位」となり「鈴木が3人の3位タイ以下、申ジエ3位以下」<2>「優勝」なら「鈴木が2人の2位タイ以下」。

<渋野優勝で賞金女王になった際に生まれる記録>

☆最年少女王 21歳16日。07年上田桃子の21歳156日を更新。

☆ツアールーキー初の国内メジャー年間複数V サロンパスカップ、日本女子プロ、日本女子オープン、ツアー選手権の4大大会のうち、渋野はサロンパスに続く国内メジャー2勝(海外の全英除く)。ツアー本格参戦1年目の選手として初となる。

☆ツアールーキー年間5勝 04年宮里藍以来2人目。(注=88年ツアー制施行後)