2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2010年(平22)大会(4月29日~5月2日、愛知・名古屋GC和合C)

18歳の石川遼が、世界主要ツアーでは史上最少スコアの58をマークし、ツアー通算7勝目を挙げた。首位と6打差18位から前半は日本ツアー記録のスコア28。後半も5バーディーを積み重ね、日本タイ記録の12バーディー、ノーボギー、通算13アンダーの267での大逆転勝利だった。

ゴルフの神様が降臨したような状態を石川も「夢の中でプレーしているような18ホール。あっという間に過ぎた」と振り返った。ギャラリーからも「怖い」「神懸かってる」「どうなってんの」と驚きの声が続出。「歴史的事件」に会場は一時騒然となった。

1番から連続バーディーで波に乗る。3番はパーも、2連続バーディーで迎えた6番パー4。第2打をグリーン左奥の傾斜のあるラフにつけた。最初のピンチも焦らない。ピンまで残り15ヤードの第3打で、サンドウエッジでチップインバーディーを決めると一気に勢いづいた。

「今日のターニングポイント。ついているなと。チップインから何かが変わった」。風の弱い絶好のコンディションもプラスに働く。パー、ボギーのことは一切忘れ、バーディーのことだけを考え攻めた。15歳8カ月で世界最年少ツアー優勝した07年5月のマンシングウェア以来の心境。「スコアを落とすことを恐れず、楽しんでプレーできた」と神の領域に突入した。

この年はここまで思うような結果が出ていなかった。特にパッティングが不調でショートする場面が目立った。マスターズでは勝負どころで守りに入って、2年連続の予選落ち。翌週の国内ツアー開幕戦も予選落ちした。気持ちは空回りし、この大会も第3日までは、スコアが伸びなかった。

前夜、コーチの父勝美氏から雷が落ちた。「パッティングの(消極的な)ショートミスを繰り返していたら、上達しないし、お前のファンは減るぞ」。父の言葉に「強気に打って攻める」自分のゴルフがよみがえった。

前年の史上最年少賞金王に続き、この年は開幕3戦目でツアー世界最少スコアをマーク、大逆転による初優勝で次元の違いを示した。生涯獲得賞金は史上最年少&最速で3億円を突破した。18歳の石川が、その飛躍を加速させた大会となった。

■過去5年の優勝者

15年 I・J・ジャン -10

16年 金庚泰 -10

17年 宮里優作 -13

18年 Y・E・ヤン -12

19年 宮本勝昌 -9