国内女子ゴルフが25日、ツアー第17戦アース・モンダミン・カップ(千葉・カメリアヒルズCC)で開幕する。今年も最大の注目選手は、渋野日向子(21=サントリー)。昨年のAIG全英女子オープン、日本人女子で42年ぶりのメジャー制覇を達成した。大ブレークから2年目を迎える渋野について、開幕直前連載を始めます。第1回は、自粛期間中も1度訪ね、原点とも言える岡山・長船CCと「シブコの木」。

   ◇   ◇   ◇

長船CCの9番バックティーに、縦横数十センチのプレートがある。

「ここからシブコの木まで240ヤード」

藤原成夫支配人(47)はフェアウエー中央に茂る松の木を指さした。「あの木のラインまでが240ヤード。彼女(渋野)は中学で、そこを越えるようになったようです」と懐かしんだ。

高さ約20メートル、横幅約10メートルの大木。バックティーから580ヤードの長いパー5のため、第1打で越えていかないと、第2打では結構邪魔になる。邪魔でなくても距離が残る。第3打でショートアイアン、ウエッジを使う位置に運べない。

藤原支配人は「アゲンストだと厳しい。でも、彼女はごつかった(体が大きかった)し」。同CCは渋野の岡山市の実家から車で約10分。平島小時代から通い、今回の自粛期間中も1度、ラウンドしている。ジュニア大会も開催していたため、上道(じょうとう)中時代は月例会などで月に1、2度通った。9番ティーに立つと、松の木の先を目指してドライバーを振った。「うまい」でなく「力強い」。そんなプレースタイルの確立に「シブコの木」は一役買ってきた。

代名詞「強気のパット」も、同CCと無縁でなさそうだ。グリーンは高麗芝。芽の影響が出にくいベント芝と違い、芽が強く、タッチが弱いとカップ際できれる。渋野の中学時代はベント芝だったが、純正ではなかった。「そもそもの高麗を、はりかえでなくオーバーシード(種を植えること)でベントにした。だから、高麗の根が残ったベントでした」。“クセが強いグリーン”に、パットの緩みは厳禁。同支配人は「彼女はしっかりヒットして、ラインを消すパットが多い。(同CCと)関係あるんじゃないかな」と想像する。

メンバー、従業員が「ひなちゃん」とかわいがり、同CCのクラブハウス内には優勝を祝う幕、全英V記念のタペストリー、トロフィーなどが山ほど飾られている。「優勝祝いの幕は最初、フロントの子が『作りましょうよ』と言い出して、どんどん増えて。今年も増えますね。いよいよです」と同支配人。同CCからの全力応援も受けて、渋野の2020年が幕を開ける。【加藤裕一】

◆長船カントリークラブ 1966年(昭41)創業。6ホールで始まり73年から18ホールに。設計は佐藤儀一氏。吉井川の河川敷にあり、コースはフラット、総ヤーデージはバックティーから6061ヤード(パー70)ある。コース内の木々が風向きを変え、グリーンは小さく砲台タイプが多く、戦略性が高い、競技会も多数開催。所在地は岡山県瀬戸内市長船町福岡49の1。

<今年のアース・モンダミン・カップ>

▼最高賞金 賞金総額2億4000万円は10月マスターズGCレディース(今年中止)と並びツアー最高。

▼無観客開催 昨年10月スタンレー・レディース最終日(悪天候)以来。メディア現場取材不可は初。

▼インターネット中継 録画を含めテレビ中継なし、ネット中継のみは史上初。

▼海外勢が大量欠場 入国制限などで、賞金シード保持者の申ジエ、アン・ソンジュ、イ・ボミら9人、前半戦出場権保持者のキム・ハヌルら4人、最終QTランク上位のアン・シネら、韓国勢を中心に計18人以上が欠場する。