稲見萌寧(もね、21=都築電気)が、座右の銘とする「忍耐」の末に今季2勝目、通算3勝目を飾り、涙を流した。2位と3打差の首位で出たが、1バーディー、5ボギーの76と4つ落とし、通算6アンダー、210と失速。永井花奈に並ばれたが、プレーオフ3ホール目で競り勝った。昨年10月のスタンレー・レディースに続き、プレーオフを制した勝負強さは健在。「はざま世代」の勝負師は、逆転での東京オリンピック(五輪)代表入りもあきらめていない。

七難八苦の末につかんだ優勝の瞬間、稲見はかみしめるように右手を握りしめた。すぐにキャディーと抱き合って喜びを爆発。タレントぞろいの98年度生まれ「黄金世代」と00年度生まれ「ミレニアム世代」と比較し、自ら「はざま世代」と呼ぶ99年度生まれが、歴代11番目に早い21歳228日(1位は畑岡奈紗の18歳261日)で通算3勝目を挙げた。「泣かないと決めていたけど苦しいラウンドだったので」と、表彰式と会見で涙を流して喜んだ。

10番パー5では、ティーショットを崖下にある隣の15番に打ち込んだ。それでも10番に戻すため、何度も高低差のある崖を登って確認し、ボギーでしのいだ。「2ラウンド回ったぐらい疲れた。去年までなら残りのホールはもたなかった」と、今オフに取り入れたキックボクシングトレの効果を実感。プレーオフ3ホールの間も、今大会前に一緒に練習ラウンドを回るなど親交のある永井と、談笑する余裕さえ見せていた。

2位に3打差で出たが失速した。それでも「ギリギリで勝つのが私らしい」と笑った。昨年に続き、プレーオフ2戦2勝の勝負強さの源は、座右の銘とする忍耐。「私にゴルフを始めさせてくれた」という祖父昭さんから18年10月に亡くなる直前に授かった言葉だ。

今年は「五輪に出たい」という大きな目標がある。6月末までに世界ランキングを急上昇させるため「3勝は必要だと思っている。まず1つクリアできた」と力説。ハードルは低くないが「あきらめていない」。ギリギリの戦いを制して身につけた自信は、一段と増していた。【高田文太】

◆女子ゴルフの東京五輪代表選考 6月28日付の世界ランキングに応じ、各国上位2人に出場権が与えられる。同ランキング15位以内に3人以上いる国は、最大4人まで出場権を得る。現在47位の笹生は、フィリピン国籍も有しており、フィリピン勢では1番手。出場権獲得は確実で、現時点ではフィリピン代表として五輪出場を計画している。