比嘉一貴(26=フリー)が昨年8月セガサミー・カップ以来のツアー通算3勝目を挙げた。後続に2打差をつけ首位で出て、2バーディー、1ボギーの70をマークして通算14アンダーの270。2位から出て69をマークした星野陸也を1打抑えて、逃げ切った。

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リードが1打の重圧など、今の比嘉にはない。最終18番パー5。昨年の自分なら越えなかった、キャリーで284ヤード必要なバンカーを越え、ドライバーでフェアウエーに運んだ。高さの増した4番アイアンのショットはピン奥20メートルグリーン奥カラーへ。星野がイーグル、バーディーを逃し、パーで逃げ切った。

「パーでいいなんて気持ちは、全然なかった。バーディーで締めることしか頭になかった」。バーディーを逃し、ばつが悪そうに笑ったが、勝つべくして勝った事実は揺るがない。

プロ6年目は、飛躍の準備ができている。0勝に終わった20-21年シーズン。終盤に疲れを感じる体を変えるべく、器具を使うトレーニングから自重スタイルへ。股関節などの柔軟性、体幹強化を求めた。49メートル毎秒前後のヘッドスピードが、平均50メートル毎秒超にアップ。飛距離は伸び、欠点だった4番アイアンへの信頼度も増した。

ラウンドは、データより感性に重きを置く。今季から、コース情報の詰まったヤーデージブックを持たなくなった。グリーン情報がより詳しいグリーンリーディングブックが世界的な流れに沿い、国内ツアーで使用禁止となったタイミングでもあったが、同ブックに事細かな情報を手書きで追加していた“メモ魔”がメモを捨てた。

昨年11月のダンロップフェニックスで、夕食をともにした永久シード選手、片山晋呉に言われた。

「もっと勝てていいよね」-。

身長はツアーメンバーで最も低い158センチだが、パワフルなゴルフで2勝した。だが、レジェンドから見れば物足りないのか?

「いいもの持ってるんだから、もっと感性を大事にしたら?」-。

比嘉はオフになり「何が足りないか?」と悩んだ。「自分なりに考えた方向性が、片山さんに言われた内容と合致してたんですよね」と言う。だから、自信を持って変革に取り組めた。

今季の目標を「複数回優勝&賞金王争い」に据える。「でも、直近の目標は来週と、日本ツアー選手権(6月2-5日、茨城・宍戸ヒルズCC)の予選通過。それを越えたら、また勝てるんじゃないですか?」。19年のツアー初優勝翌週に予選落ちして情けなかった。日本ツアー選手権は過去出場2戦とも予選落ちだ。冗談交じりの口調に、近いうちの次の優勝への自信が漂った。

 

◆比嘉一貴(ひが・かずき)1995年(平7)4月23日、沖縄県生まれ。ゴルフは10歳から。本部高で宮里3きょうだいの父優さんに師事し、ナショナルチーム入り。東北福祉大で16年日本オープンのローアマなどを獲得。17年プロ転向、下部ツアー2勝後に19年KBCオーガスタでツアー初優勝。20-21年シーズンの賞金ランク13位。158センチ、70キロ。