蝉川泰果(21=東北福祉大4年)がツアー史上初となるアマチュア2勝を達成した。通算13アンダーと6打差リードの首位でスタート、2バーディー、2ボギー、1トリプルボギーの73で回り、通算10アンダー、270。2位の比嘉に2打差をつけ、歴史的勝利を飾った。日本オープンのアマチュアVは、1927年の第1回大会の赤星六郎以来95年ぶり2人目の快挙となった。

狭いフェアウエー、深いラフ、硬いグリーン-。ナショナルオープンの権威を示す難セッティングに、多くのプロがディフェンシブとなる中で、蝉川は恐れず攻め続けた。スタートの1番パー4では、フェアウエー左からの第2打をグリーンの傾斜を利用してピン奥2メートルに寄せるスーパーショットでバーディー発進。続く2番パー5でもバーディーを奪い、序盤で比嘉との差を8打まで広げた。しかし、5番パー4でボギーをたたくと、9番パー4で悪夢のトリプルボギー。第2打をグリーン奥ラフに打ち込み、2度脱出に失敗。5打目でグリーンに乗せ、そこから2パット。バーディーを奪った比嘉との差は一気に4打差まで縮まった。

それでも勝負のサンデーバックナインでは、10番パー4で第2打がバンカーにつかまったが、そこからピン1メートルにつける好アプローチでパーセーブ。悪い流れを絶つと、11番で比嘉がボギーをたたき5打差に広がった。14番、15番と比嘉が連続バーディーを奪い3打差に迫られ、17番のボギーで2打差まで詰め寄られたが貯金を生かし逃げ切った。

優勝インタビューでは「いや、すごいですね。アマが今まで1勝しかしたことのない大会で自分が2勝目できたことは、すごくうれしく思っています」と喜びを爆発させた。最終18番では第2打がバンカーにつかまり、アプローチもグリーン右カラーとピンチを迎えたがこれを決めてパーとして勝ちきった。「まさかパーセーブできるなんて思ってなかったが、2メートル手前で『わっ、入るわ』と確信がついた瞬間、気付いたらガッツポーズしてました」と優勝の瞬間を振り返った。これからの抱負を「やっぱり見ていて面白いなだったり、すごいプレーができるように、タイガー・ウッズになれるように頑張りたい」と話していた。

「真っすぐ飛ぶイメージしか持たず、振り切る」。パー3を除く14ホール中10ホール前後でドライバーを握った。6月の下部ABEMAツアー・ジャパンクリエイトin福岡雷山で下部ツアー5人目(当時)となるアマチュア優勝を飾った。「あの試合でマインドが変わった」。プロトーナメントで結果が出せず、時にビビりがちでミスをした自分に別れを告げた。

「どの試合でも勝てるイメージを持つ」と、9月にはツアーのパナソニック・オープンで史上6人目のアマチュア優勝。昨年大会で同5人目の快挙を達成した中島啓太のプロデビュー戦で話題をさらった。

パナソニック・オープン以来のツアー出場となった今大会、第1日に64、第3日に63のビッグスコアをたたき出し、通算13アンダーの独走態勢に入った。第3日は9番パー4で谷越えのワンオンに成功し、劇的なイーグルを決めて波に乗った。「最終日は(スコア62で)8アンダーぐらい伸ばせるように頑張りたい」。第1日から首位を守り抜いたアマチュア優勝は、80年中四国オープンの倉本昌弘以来2人目だ。松山英樹、石川遼もなし得なかったアマチュアでのツアー2勝。攻撃ゴルフを貫いて、4日間、72ホールを駆け抜けた。

○…2位の比嘉一貴は6打差で出て、蝉川を2打差まで粘り強く追い詰めた。「複雑ですね。終わってみたら、悔いの残るホールは多いかなと思います。蝉川のスコアに引っ張られたところもあった」。東北福祉大出身。後輩の優勝に「歴史的な快挙。それに見合う素晴らしいプレー、本当にすごいプレーでした。思い切りの良さなど学ぶことが多かった」と脱帽した。

○…蝉川と同じアマチュアの杉浦悠太が3位に入った。「プロの試合で最高順位で、アンダーが5人しかいない中の1人になれたのは、少し自信になりました」。蝉川について「一緒に回って本当に差を感じた。ギャラリーを沸かすのは、こういうプレーか、と。自分の足りないところも分かって、意識が変わった」と刺激を受けていた。