ゴルフの国内女子ツアーで元賞金女王のイ・ボミ(34=韓国)が、今シーズン限りで日本ツアーから引退することを27日、所属する延田グループが発表した。
国内通算21勝。3月2日に開幕するダイキン・オーキッド・レディース(沖縄・琉球ゴルフ倶楽部)に出場。10月19日に開幕するNOBUTA GROUPマスターズGCレディース(兵庫・マスターズGC)が、最終試合になる可能性がある。
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今から6年前のことである。
2017年5月。イ・ボミがこんな話をしていたのが、取材ノートに残っている。
「私もいつか、引退を考える時期が来る。それって、そう遠くはないと思うんです。だから1度、藍ちゃんに聞いてみたかった」
ゴルフの国内女子ツアー、リゾートトラスト・レディース(奈良・オークモントGC)の会場だった。その前日に宮里藍さんが17年限りでの引退を発表。仲の良かった彼女に宮里さんとの思い出を聞くと、そんな答えが返ってきた。
2015、16年に2年連続で賞金女王になった。まだ渋野日向子、勝みなみら1998年度生まれの黄金世代がプロテストに合格する前のことである。
強いだけではない。観衆を魅了するスタイルで注目を浴びた。
ただ、いつしかそれが、重圧となる。
15年に7勝、16年に5勝を挙げながら、17年はシーズン序盤から苦しむようになっていた。開幕戦で3位に入って以降は8試合でトップ10入りが2度、予選落ちが2度。迎えた9戦目、5月の中京テレビ・ブリヂストンレディースの予選ラウンドで宮里さんと同組になると、身の引き方を尋ねたのだという。
3年連続の賞金女王への期待がかかっていたシーズンだった。周囲の目はまだ絶頂期のように映っていたが、もしかするとこの時期からイ・ボミ自身が変化を感じていたのかも知れない。16年に1位だったパーオン率は17年は23位、18年は68位。平均パット数(パーオンホール)も3位から17位、57位と下降線をたどる。
「いいショットを見せたい。ボミがいいプレーをするところを見せたい」
その一心で17年を乗り切り、8月のCATレディース(神奈川・大箱根CC)で優勝。以降、勝利から遠ざかった。
18年の秋に韓国の人気俳優イ・ワンとの交際を公表し、翌19年に結婚を発表。その後はコロナ禍の入国制限の影響も受けた。昨年は出場14試合中トップ10入りが1度、予選落ちが8度。11年に国内ツアーに参戦してから獲得賞金は最も少ない約684万円で100位に終わっている。
親交の深いプロ野球巨人の原辰徳監督からは、毎年のようにこんな言葉をかけられていたという。
「私はボミちゃんが大好き。どんなに素晴らしい選手でも悩む時がある。それを上昇するきっかけにしてほしい」
会場ではみんなに笑顔で語りかけ、愛された。
現時点で決まっている国内ツアーの出場予定は4試合。まだ輝く舞台は残されている。
復活の瞬間を、有終の美を-。待っている。【元ゴルフ担当=益子浩一】
【引退までの国内ツアー出場予定(所属先発表分)】
◆ダイキンオーキッドレディース(3月2~5日、沖縄・琉球GC)
◆アクサレディース(3月24~26、宮崎・UMKCC)
◆アース・モンダミンカップ(6月22~25日、千葉・カメリアヒルズCC)
◆NOBUTA GROUPマスターズGCレディース(10月19~22日、兵庫・マスターズGC)