金谷拓実(25=Yogibo)が第1ラウンド(R)から首位を守る完全優勝で国内メジャー初Vを飾った。

最終Rでは一時、中島啓太と宋永漢に並ばれたが、終盤にバーディーを奪うなど勝負どころで実力を発揮。2バーディー、2ボギーの71で回り、通算11アンダーの273で、2打差をつけて勝利した。国内ツアーでは約2年ぶり、アマ時代も含むツアー通算4勝目は、闘病中の母に贈る優勝にもなった。

リードを奪い返し、1打差で迎えた最難関の17番パー4。金谷が高精度の1打で、約2年ぶりの国内優勝、初の国内メジャー制覇を引き寄せた。第1打を左ラフに入れながら、ピンをデッドに狙った。「攻めるしかない。開き直って打ちました」。残り195ヤード、池越えの第2打は6番アイアンでピンそば約50センチにぴたり。同組で優勝を争った中島も「スーパーショット。魂がこもっていた」とたたえる1打で後続に2打差をつけた。

昨夏、母の美也子さんから乳がんと診断されたことを打ち明けられた。自宅では元気に振る舞う母が、入院先では苦しそうにしている姿も目にした。実家のある広島の隣県岡山で開催された前週のミズノ・オープンは応援に来た母の前で優勝を争いながら1打差の3位。「早く優勝して、励みにしてほしいと思っていた」。悔しさをばねに、実家でテレビ観戦した母へ大きな1勝を贈った。

東北福祉大の先輩、松山英樹以来2人目の日本男子アマチュア世界ランキング1位に輝き、19年にはツアー史上4人目のアマ優勝を果たした。20年10月にプロ転向すると、3戦目で早くも優勝。翌年の開幕戦も制したが、その後は勝利から遠ざかった。しかし今年2月にアジアツアー優勝に続き、国内メジャーで勝利。「優勝できず自信を失いかけていたが取り戻すことができた」と笑顔が戻った。

この優勝で、国内の5年シード、欧州のBMWインターナショナル、日米のZOZOチャンピオンシップの出場権も獲得した。今後については「まだ分からない」としながらも、先輩松山の背中は常に追いかけている。「学生のときには松山さんを見てプロ選手になりたいと思った。松山さんのようになりたいし、早く結果を出してそこ(同じ舞台)でプレーしたい。もっともっと強くなって、世界でも活躍できるように頑張りたい」。国内ビッグタイトルを手に、さらに大きく羽ばたいていく。【奥岡幹浩】

<金谷拓実(かなや・たくみ)アラカルト>

◆生まれ 1998年(平10)5月23日、広島県生まれ。

◆ゴルフ歴 5歳からゴルフを始める。15年に17歳51日の史上最年少で日本アマ優勝。同年の日本オープンは11位で、史上最年少のローアマに。19年にアマチュア世界ランキング1位となり、同11月に三井住友VISA太平洋マスターズでアマ4人目のツアー優勝。20年10月にプロ転向。

◆趣味 バスケットボールNBA観戦。

◆息抜き 「最近、Netflixを見るようになった」。

◆好きな食べ物 ハンバーグ。

◆サイズ 172センチ、75キロ。

◆血液型 O。