女子ゴルフで、2歳の娘を育てながら昨年11月のプロテストに合格した、異色のルーキーがプロデビューする。

神谷和奏(わかな、22=ソニーネットワークコミュニケーションズコネクト)が、5日開幕の国内ツアー、富士フイルム・スタジオアリス女子に出場。4日は会場の埼玉・石坂GCで、夫でコーチ、デビュー戦のキャディーも務める幸宏氏(36)と最終調整を行った。出産後にプロテストに合格したのは、88年のツアー制施行後では初。好成績で愛娘に、プレゼントを贈ることを目標に掲げた。

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2歳の娘がいるとは思えない、あどけない笑顔を振りまきながら、神谷和は最終調整を行った。笑顔の先には「ほとんどケンカしない」という、仲むつまじい夫の幸宏氏の姿があった。コーチでもある夫の的確なアドバイスを、素直に受け入れる厚い信頼関係をのぞかせる。兄の羽藤勇司も姉の琴和もプロというゴルフ一家に育ち、最も信頼する幸宏氏と19歳だった21年に「ニコニコでいられるように」と、2月5日に結婚した。プロデビュー戦は「予選通過が目標。成績が良ければ、娘の好きな人形を買ってあげたい」と笑った。

21年9月11日に、長女の咲凜(えみり)ちゃんが誕生した。それでも「諦めようとは思わなかった」と、プロゴルファーの夢を追い続けた。子育て最優先だけに、練習ができない日もあった。高校まで目立った実績はなく、プロテストに合格できる保証もなかった。それでも平日は長女を保育園に預け、2歳になるころには土、日曜日は一緒に練習。4度目の挑戦となった昨年のプロテストに合格した。念願のデビュー戦を翌日に控えても「ワクワクしていて今の段階で緊張はしていない」と笑った。“母は強し”だ。

幸宏氏は「ショットがすごくいい」と、潜在能力の高さを早くから見抜いていた。今も「曲がることがない。と言って、明日(第1日)曲がったらまずいな」と話し、夫婦そろって大笑い。神谷和が「夫は大事なところで感極まっちゃう。最終ホールとか。かえって私は冷静でいられるのかな」と話すと、幸宏氏は頭をかいた。師弟から夫婦となった14歳差婚は、インターネット上などで臆測の投稿も見られる。それでも2人は「強く生きます」と声をそろえ、たくましい。最後まで笑顔で初陣を心待ちにしていた。【高田文太】

◆神谷和奏(かみや・わかな)2001年(平13)10月1日、千葉・富里市生まれ。現在はともにプロとなった兄羽藤勇司、姉羽藤琴和の影響で、3歳からゴルフを始める。千葉・わせがく高では、18年全国高校選手権春季大会5位などの実績がある。21年2月5日にコーチの神谷幸宏氏と結婚。同年9月11日に長女咲凜ちゃんを出産。昨年11月のプロテストに合格。富士フイルム・スタジオアリス女子で、主催者推薦でプロデビューする。165センチ。

◆国内女子プロゴルファーの結婚、出産 妊娠中にツアーに出場した横峯さくららの影響もあり、近年はツアー会場に託児所が設けられるケースも増え、現役選手の結婚、出産が増加傾向にある。それでも出産後のプロテスト合格は、88年のツアー制施行後では神谷和奏が初のケース。出産後の優勝はこれまでに森口祐子、樋口久子、木村敏美、山岡明美、塩谷育代、若林舞衣子と6人いる。出産後の勝利数では森口の11勝が最多。木村の10勝が続く。